ポール・ブリッグス

ニュージーランドのクライストチャーチで生まれたポール・ブリッグス（Paul Briggs）は、オーストラリア国籍を持つ元プロキックボクサーであり、プロボクシングでも成功を収めた異色のファイターです。1975年 8月13日生まれ。特にボクシングでは、OPBF東洋太平洋ライトヘビー級王者としての実績を残しました。

キックボクサーとしての軌跡

ブリッグスの格闘技キャリアは、幼少期に始めたキックボクシングからスタートしました。15歳でプロの世界に進むと、その実力は早くから注目を集めます。17歳の若さで、当時の世界チャンピオンであるジョムホート・ソーチタラダ（後のジョムホート・キアタディサック）が持つタイトルに挑戦する機会を得ましたが、強烈なローキックにより2ラウンドKO負けを喫するという洗礼を受けました。

この敗戦を乗り越えるため、ブリッグスはムエタイの本場であるタイへ渡り、約2年間にわたり厳しいトレーニングを積みました。この海外での経験が彼のファイターとしての基盤をさらに強固なものとし、帰国後の19歳時にはWKAムエタイ世界スーパーミドル級王座を獲得するという輝かしい成果を上げました。

キックボクシング時代には、日本のリングや対戦相手とも縁がありました。1993年12月には、オーストラリアのメルボルンで、佐竹雅昭と共に来豪した金泰泳と対戦し、1ラウンドKO勝利という鮮烈な印象を残しました。また、1999年12月24日には来日し、日本の内田ノボルとの試合では、4ラウンド開始直後にKO勝ちを収めるなど、強豪日本人キックボクサーに対してもその力を証明しました。

キックボクシングのプロ戦績は、60戦して54勝（KO数不明）5敗1分という記録を残しています。

プロボクシングへの挑戦

キックボクシングで実績を積んだ後、ポール・ブリッグスはプロボクシングの世界へと活躍の場を移します。1994年6月19日にボクシングデビュー戦を行い、判定で勝利を飾ります。しかし、次の試合までには約3年という長い期間が空き、1997年1月4日に行われた2戦目でキャリア初の敗戦を経験することになります。

その後、本格的にボクシングに取り組むようになり、地域タイトル戦線で着実にステップアップを果たしました。2000年7月28日には、ダニエル・ローセルと対戦し、5ラウンド負傷判定ながら勝利を収め、空位だったIBFパンパシフィッククルーザー級王座を獲得しました。同年11月24日には、アドリアン・ベリンを8ラウンドTKOで下し、空位だったオーストラリアライトヘビー級王座も手に入れています。このオーストラリア王座は後に一度防衛に成功しました。

2002年3月4日、ブリッグスはポール・スモールマンに勝利し、空位となっていたOPBF東洋太平洋ライトヘビー級王座を獲得しました。このOPBFタイトルは3度にわたり防衛を成功させ、その実力を示しましたが、その後返上しています。

地域タイトルでの活躍が評価され、2004年8月15日にはWBC世界ライトヘビー級王座挑戦者決定戦でスティーピ・ダービシュと対戦。3-0の明確な判定勝利で世界王座への挑戦権を獲得しました。

迎えた世界初挑戦は2005年5月21日、空位のWBC世界ライトヘビー級王座を懸けてポーランドのトマシュ・アダメクと対戦。激闘となりましたが、0-2の僅差判定で敗れ、世界王座獲得はなりませんでした。翌2006年10月7日には、再びWBC王者となっていたアダメクへの再戦に挑みます。この試合では初回にダウンを奪うという有利な展開を作りましたが、その後アダメクが盛り返し、またしても0-2の判定で敗れ、世界王座への夢は叶いませんでした。

世界挑戦後もリングに上がり続け、2007年2月4日には南アフリカのロベルト・ヴァン・アスウェゲンとIBFオーストラレーシアライトヘビー級王座決定戦を行い、大差判定での勝利によりタイトルを獲得しています。

しかし、この試合を最後にブリッグスはリングから遠ざかり、約3年間のブランクに入ります。2010年7月21日、オーストラリアのダニー・グリーンが持つIBO世界クルーザー級王座に挑戦する形で復帰を果たしますが、長いブランクの影響は隠せず、体が十分に動かないままわずか1ラウンド29秒でTKO負けを喫しました。不本意な結果に、観客からはブーイングが起こるという厳しい状況でのキャリア終盤となりました。

戦績

プロキックボクシング: 60戦54勝5敗1分
プロボクシング: 30戦26勝(18KO)4敗

獲得タイトル

プロキックボクシング:
WKAムエタイ世界スーパーミドル級王座
プロボクシング:
IBFパンパシフィッククルーザー級王座
オーストラリアライトヘビー級王座
OPBF東洋太平洋ライトヘビー級王座
* IBFオーストラレーシアライトヘビー級王座

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