マイクロニードリング

マイクロニードリングとは

マイクロニードリングは、極細の針を皮膚に刺すことで、皮膚の自己再生能力を活性化させる美容施術です。皮膚に微細な傷をつけることで、コラーゲンやエラスチンの生成を促し、肌のハリや弾力を回復させる効果が期待できます。

歴史

マイクロニードリングの歴史は、意外にも古く、タトゥーの技術にそのルーツを見ることができます。2005年に南アフリカの形成外科医デスモンド・フェルナンデスが、ローラー型の器具を用いた「経皮コラーゲン誘導療法」を提唱したことで、美容施術としてのマイクロニードリングが広く知られるようになりました。

フェルナンデスは、1980年代からビタミンAを用いた皮膚治療に取り組んでおり、その過程でマイクロニードリングのアイデアを思いついたと言われています。当初はタトゥー用の器具を試していましたが、リスクが高く施術も難しかったため、専用の器具を開発しました。

1996年には国際美容整形学会で、ローラー型の経皮ニードリングを紹介し、針の長さ3mmの実験的器具を設計しましたが、実際には痛みが強く出血も伴いました。2008年には、1mmの針でも同様の治療効果が得られることを発見し、ダウンタイムや痛みを大幅に軽減することに成功しました。

レーザー治療やケミカルピーリングといった他の美容施術と比較して、マイクロニードリングは皮膚への侵襲性が低く、副作用のリスクも低いことが特徴です。これらの施術は、皮膚の深層を傷つけることで効果を発揮しますが、その分、治癒に時間がかかったり、瘢痕や色素沈着のリスクも伴います。マイクロニードリングは、表皮のバリア機能を維持しつつ、真皮の再生を促すため、より安全な治療法として注目されています。

マイクロニードリングの器具

マイクロニードリングには、主に以下の3種類の器具が用いられます。

ダーマローラー
ローラー状の器具に、0.5mmから1.5mm程度の極細の針が約200本付いています。
使い捨ての針は、シリコンや医療用ステンレスで作られており、ガンマ線照射で滅菌処理されています。
針の長さによって効果や痛みが異なり、0.5mmまでは比較的痛みが少なく、1mmを超えると局所麻酔が必要になる場合があります。
家庭用としては0.15mm以下のものが販売されており、美容液の浸透を助ける目的で使用されます。

ダーマスタンプ
ダーマローラーの小型版で、スタンプのように皮膚に針を刺します。
針の長さは2mm程度で、ニキビ跡などの限局的な瘢痕の治療に適しています。

ダーマペン
ペン型の電動器具で、針の侵入速度や深さを調整できます。
より精密な施術が可能で、さまざまな肌の悩みに対応できます。

マイクロニードリングの作用機序

マイクロニードリングは、皮膚に微細な傷をつけることで、創傷治癒のプロセスを活性化させます。傷が治る過程で、成長因子が放出され、血管が新生し、コラーゲンやエラスチンといった肌の弾力成分の生成が促されます。これにより、古い瘢痕組織が分解され、新しい皮膚組織が形成されることで、肌の若返り効果が期待できます。

研究によると、1ヶ月ごとに4回施術を行った場合、コラーゲンやエラスチンが最大400%増加したという報告があります。ニキビ跡の治療には、一般的に3〜4回の施術が必要とされています。

マイクロニードリングの適応

マイクロニードリングは、主に以下の目的で使用されています。

ニキビ跡の治療
肌の若返り
肥厚性瘢痕やケロイドの治療
火傷跡の改善
男性型脱毛症の治療

マイクロニードリングは、レーザー治療などと比較して、副作用のリスクが低いというメリットがあります。施術後のダウンタイムも短く、1mm程度の針であれば、施術後すぐに日常生活に戻ることができます。

また、マイクロニードリングは、美容液などの有効成分の浸透を助ける効果もあるため、外用薬と併用することで、より高い効果が期待できます。特に、ビタミンAやビタミンCなどの成分との相性が良いとされています。

マイクロニードリングの副作用と禁忌

マイクロニードリングの一般的な副作用としては、施術後の赤み、腫れ、痛みなどが挙げられますが、これらは一時的なものです。まれに、色素沈着が起こることがありますが、これは施術後の紫外線対策を怠った場合に起こりやすいとされています。

マイクロニードリングの禁忌としては、以下のものが挙げられます。

活動性のニキビ
ヘルペスやイボなどの感染症
中等度以上の湿疹や慢性的な皮膚疾患
ケロイド体質
化学療法を受けている方

また、施術後の過度なピーリングや、ビタミンCやレチノイン酸といった刺激の強い成分の使用も避ける必要があります。

まとめ

マイクロニードリングは、肌の再生能力を高めることで、ニキビ跡や肌の老化といったさまざまな肌トラブルを改善する効果が期待できる美容施術です。ダウンタイムが短く、副作用のリスクも低いことから、近年人気が高まっています。しかし、施術を受ける際には、専門医のカウンセリングを受け、自身の肌の状態や目的に合った施術方法を選ぶことが大切です。

参考文献

デスモンド・フェルナンデス『Dr.フェルナンデスのスキンケアのすべて　世界70ヶ国以上の人から愛される美容の真実』幻冬舎、2011年。

関連項目

* ケミカルピーリング

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