マイケル・アンソニー

1954年 6月20日生まれ、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身のベーシスト、音楽家。

伝説的なロックバンド、ヴァン・ヘイレンの初代ベーシストとして広く認知されています。初期のニックネームである「キャノンマウス」が示すように、彼の最大のトレードマークは、エディー・ヴァン・ヘイレンやデイヴィッド・リー・ロスといったボーカル陣のメインメロディーに寄り添いつつも、バンドのサウンドに厚みと輝きを与える力強いハイトーンのコーラスワークでした。

また、そのベーシストとしてのスタイルは、派手さよりもバンド全体のボトムを支える堅実で安定したプレイが特徴であり、ヴァン・ヘイレンの躍動的なサウンドを根底から支える重要な役割を果たしました。

本名はマイケル・アンソニー・ソボレフスキ（Michael Anthony Sobolewski）です。

来歴

ポーランド系の家系に生まれたマイケル・アンソニーは、幼少期には野球に熱中し、その才能からプロ選手も期待されるほどでした。しかし、思わぬ出来事がきっかけで音楽活動に関心を抱くようになり、トランペット、そしてギターへと楽器を変遷させます。最終的にベースギターにたどり着いたのはこの頃です。

1970年代に入り、パサデナの大学に進学した彼は、学内の音楽サークルでスリーピースバンド「Snake」を結成し、ベーシスト兼リード・ヴォーカルとして活動します。

その後、運命的な出会いが訪れます。スネイクでの活動中、知人であったエディーとアレックスのヴァン・ヘイレン兄弟が組んでいたバンド「Mammoth」（後のヴァン・ヘイレンの前身）に引き抜かれることになります。エディーとは大学の同じ授業で知り合った仲であり、その縁がオーディションへの誘いにつながりました。

バンド加入の経緯については諸説あり、兄弟のプレイに感銘を受けつつも、元々所属していたSnakeの仲間への配慮から参加に戸惑いを感じたものの、仲間の後押しで加入を決意したという説も存在します。しかし、マイケル本人は、兄弟からの誘いを受けてすぐに加入を承諾したと語っており、後者の説が一般的とされています。

当時のエレクトリックベースは非常に高価だったため、ベースに転向した初期には、手持ちのエレクトリックギターの1弦と2弦を外し、低音パートを練習していたというエピソードが残っています。

ヴァン・ヘイレンが成功を収める中で、マイケルはベーシストとしてだけでなく、トレードマークである唯一無二のコーラスワークでバンドサウンドに貢献し続けました。

しかし、時代が進むにつれて、バンド内の人間関係に変化が生じます。特に、1996年頃にサミー・ヘイガーがバンドを離れる前後から、ヴァン・ヘイレン兄弟とサミーの間の緊張関係が、マイケルと兄弟の関係にも影響を与え始めたと噂されるようになります。サミー在籍時代のアルバムや『ヴァン・ヘイレンIII』の一部の楽曲において、彼のベースパートが他の演奏者に差し替えられたのではないかという憶測も流れました。

2000年代以降の活動とヴァン・ヘイレンからの離脱

2000年から2001年にかけて、元メンバーであるデイヴィッド・リー・ロスのソロライブにゲストとして出演しました。さらに、2002年には「Sammy and Dave Tour」にサミーのサポートメンバーとして参加します。これらの活動は、当時ヴァン・ヘイレン兄弟との関係が悪化していた状況下で、彼らに無断で行われたため、特にエディー・ヴァン・ヘイレンとの間に決定的な亀裂を生じさせることとなりました。

2004年には、サミーをボーカルに迎えたラインナップでのヴァン・ヘイレン再結成ツアーに参加しています。

しかし、2006年4月、音楽誌『BURRN!』のインタビューに応じたマイケルは、当時のヴァン・ヘイレンが実質的な解散状態にあることを示唆し、自身が知らぬ間にバンドを「クビ」にされていたことを明かしました。また、『ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン』に収録された新曲3曲についても、クレジットには名があるものの、実際にはコーラスのみの参加であり、2004年の再結成ツアーでもサポートメンバー扱いに近かったという内情を打ち明けています。このインタビューの中で、今後は2002年のツアーを通じて親交を深めたサミー・ヘイガーと共に、ヴァン・ヘイレンのコピーバンド「The Other Half」として活動していく意向を示しました。

同年9月、後任としてエディーの息子であるウルフギャング・ヴァン・ヘイレンが正式にヴァン・ヘイレンに加入することが発表され、マイケルのバンドからの離脱は決定的なものとなりました。

ヴァン・ヘイレン脱退後、彼はサミー・ヘイガー、ジョー・サトリアーニ、そしてレッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラマー、チャド・スミスと共にスーパーグループ「Chickenfoot」を結成し、精力的に活動を行っています。

エピソード

ジャックダニエルとベース: 大のジャックダニエル好きとして知られ、ライブ中にステージ上で愛飲する姿も見られます。ベースソロの際には、ジャックダニエルのボトルを模した四角いユニークなベースを使用することが多く、エフェクターやパフォーマンスを駆使した迫力あるプレイを展開します。ヴァン・ヘイレンの代表曲「パナマ」のミュージックビデオでもこのベースを確認できます。近年では、自身がプロデュースするチリソースにちなんで、タバスコの瓶を模したベースを使用することもあります。
デビュー時の噂: デビュー当時の独特のコーラス技術と風貌から、KISSのジーン・シモンズと同一人物ではないかという噂が一部で囁かれたことがあります。
後任への言及: Chickenfootでの活動中のインタビューで、ヴァン・ヘイレンの後任ベーシストにエディーの息子ウルフギャングが決定したことについて問われた際、「彼が誰よりも適任だと信じているし、私と比較して彼を批判しないでほしい」という趣旨の肯定的な発言を残しています。
私生活: 1981年に高校時代の同級生と結婚し、2人の娘をもうけています。現在はカリフォルニア州ニューポートビーチに自宅を構えています。
* ビジネス活動: 自身の公式サイトを通じて、食品ブランド「マッド・アンソニー（Mad Anthony）」をプロデュースしています。このブランドのチリソースやバーベキューソースは、サミー・ヘイガーが経営するレストランでも販売されています。

ヴァン・ヘイレンという偉大なバンドの根幹を支え、その後のキャリアでも多様な音楽活動を展開するマイケル・アンソニーは、多くのファンに愛されるベーシストです。

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