マイケル・バリント

マイケル・バリント（Michael Balint, 1896年12月3日 - 1970年12月31日）は、20世紀に活躍したハンガリー出身の精神科医、精神分析家です。本名はバーリント・ミハーイ(Bálint Mihály)といい、精神医学、特に医師と患者の関係性に関する研究で国際的に知られています。彼の業績は、精神分析学のみならず、医療現場における患者中心のアプローチの発展に大きく貢献しました。

バリントは1896年にハンガリーで生まれ、1920年にブダペスト大学医学部を卒業しました。その後、ベルリンで医療活動に従事した後、精神分析家であるフェレンツィ・シャーンドルの下で精神分析を学びました。フェレンツィは、当時フロイトに次ぐ影響力を持つ精神分析家の一人であり、バリントの思想形成に大きな影響を与えました。1938年、第二次世界大戦の勃発を前にロンドンへ移住し、翌年にはマンチェスターに拠点を移しました。

バリントの研究は、医師と患者の関係性、特に患者の心理的な側面を重視した点に特徴があります。彼は、医師が患者に対して無意識的に抱く態度や行動が、患者の治療に大きな影響を与えることを指摘しました。この考え方は、後の「バリント・グループ」と呼ばれる医師向けの研修プログラムへと発展し、医師が自身の感情や態度を認識し、患者とのより良い関係を築くための手法として広く用いられています。

彼は精神分析の理論において、基底欠損、対象にしがみつくオクノフィリア、スリルを求めるフィロバット（フィロバティスム）などの概念を提唱しました。これらの概念は、人間の心理的な発達や行動を理解する上で重要な視点を提供しています。

基底欠損：人が根本的に抱える欠如感のこと。
対象にしがみつくオクノフィリア：対象に過度に依存する心理状態。
* スリルを求めるフィロバット：スリルや危険を求める行動傾向。

バリントは、ドナルド・ウィニコットやメラニー・クラインといった著名な精神分析家とも交流があり、彼らの理論からも影響を受けました。彼の研究は、精神医学、精神分析学、対象関係論といった分野に深く関連しており、現代の心理療法やカウンセリングにおいても重要な基盤となっています。

マイケル・バリントの業績は、医師と患者の関係性における心理的な側面を重視し、患者中心の医療を推進する上で不可欠なものとなっています。彼の思想は、現代の医療現場においても重要な影響を与え続けています。

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