マイセン (陶磁器)

マイセン磁器：西洋磁器の頂点に輝く歴史と芸術

はじめに

マイセン磁器は、ドイツのマイセン地方で生産される磁器として名高く、西洋磁器の最高峰として広く知られています。その歴史は、18世紀初頭、ヨーロッパにおける白磁製造への強い憧れと、ザクセン選帝侯アウグスト2世の強い意志から始まりました。

誕生秘話：錬金術師と白磁の夢

17世紀、東洋から伝わった白磁はヨーロッパの人々を魅了しました。アウグスト2世は、この白磁製造を成し遂げるため、錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーを幽閉、研究を命じました。ベトガーは、チルンハウスら科学者たちの協力を得て、1709年、アウエ鉱山のカオリンを用いた白磁製造に成功。これは西洋磁器の歴史における画期的な出来事でした。

翌1710年には「王立ザクセン磁器工場」がドレスデンに設立され、後にマイセンに移転。厳重な機密保持のもと、硬質磁器製造の独占権が与えられ、現在の「国立マイセン磁器製作所」の礎が築かれました。ベトガーは、磁器製造に貢献した後、若くして亡くなりました。近年の研究では、チルンハウスが既に1704年に磁器焼成に成功していた可能性も指摘されています。

マイセンの発展：立地と技術革新

マイセンの繁栄は、エルベ川による水運の便と、近郊におけるカオリンの豊富な産出に支えられました。初期のマイセン磁器は、中国の五彩磁器や日本の伊万里焼の影響を強く受けましたが、1720年以降、ヘロルトら優れた絵付師の招聘により、ヨーロッパ独特のロココ調の作品が主流となりました。1764年には、工場独自の芸術学校が設立され、高度な技術と芸術性を継承する体制が整えられました。

贋作防止のため、1723年から交差した二本の剣のトレードマークが使用され、現在もそれは受け継がれています。このマークの細部のデザインは、時代によって微妙な変化が見られます。

代表作：伝統と革新の融合

マイセン磁器を代表する作品群は、東洋磁器からの影響とヨーロッパ独自の感性の融合を見事に示しています。

ブルーオニオン: 中国のザクロを誤ってタマネギと認識したことから生まれた、コバルトブルーの玉ねぎ模様が特徴的な作品です。ヘロルトによる上絵付釉の開発によって実現しました。
ブルーオーキッド、インドの華、柿右衛門、ドラゴン: シノワズリ（中国趣味）を代表する図案で、中国や日本の磁器様式をモチーフにしています。「柿右衛門」は柿右衛門窯、「ドラゴン」は景徳鎮窯などの様式を模倣しています。
ドイツの華: ドイツの草花をモチーフにしたシリーズ。1730年代にクリーガーによって描かれ始め、植物図鑑を参考に発展しました。
猿の楽団: ケンドラーとライニッケによる、猿がオーケストラを演じるユーモラスな人形シリーズ。マイセン磁器の造形技術の高さを象徴する作品です。

結び

マイセン磁器は、その歴史、技術、芸術性の高さから、世界的に高い評価を受けています。東洋磁器からの影響を土台としながらも、独自の技術革新と芸術性を融合させたマイセン磁器は、現代においても、多くの人々を魅了し続けています。その歴史と伝統は、これからも大切に受け継がれていくことでしょう。

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