マイニラ砲撃事件

マイニラ砲撃事件：冬戦争の引き金となった偽旗作戦

1939年11月26日、ソ連とフィンランドの国境付近、マイニラ村で砲撃事件が発生しました。ソ連は、フィンランド軍による国境侵犯と主張し、人的被害があったと発表。この事件を口実に、わずか4日後にフィンランドへの侵攻を開始し、冬戦争が勃発しました。しかし、歴史研究の進展により、この事件はソ連による自作自演、いわゆる偽旗作戦であったことが明らかになっています。

事件の背景

ソ連とフィンランドは、複数の不可侵条約を締結していました。にもかかわらず、ソ連はフィンランド侵攻の口実を探していました。これは、当時、ソ連が周辺諸国への影響力拡大を図っていたこと、そして、ドイツのポーランド侵攻（グライヴィッツ事件）のような先例があったことが背景にあります。ソ連は事前に軍事演習を実施しており、その演習シナリオは、国境紛争を戦争の引き金とするというものでした。

事件の発展

ソ連領内からフィンランド領に向けて7発の砲弾が発射されました。フィンランド側は、砲撃地点がソ連領内であると確認。中立的な調査を提案しましたが、ソ連はこれを拒否し、フィンランドとの国交断絶を宣言しました。ソ連共産党指導者アンドレイ・ジダーノフの文書には、この事件がフィンランドを侵略者として糾弾し、攻撃の口実を得るための策略であったことが記されています。フィンランドは、自国軍の関与を否定し、ソ連軍の砲撃によるものだと主張しました。実際、フィンランド軍の記録は、マイニラ村への射程距離外にあったことを示しています。

事件後の展開

フィンランドはモスクワへ使節団を派遣し、砲撃を否定、国境問題に関する共同委員会の設置を提案しましたが、ソ連は拒否。ソ連・フィンランド不可侵条約を破棄し、11月30日、ソ連軍はフィンランドへ侵攻を開始しました。アメリカ人ジャーナリストのジョン・ガンサーは、この事件を「不格好で捏造された事件」と評し、その後の歴史研究もソ連による偽旗作戦という結論に達しています。ソ連の機密文書分析からは、事件当時にソ連軍の人的被害に関する報告がないことが判明。このことから、ソ連軍による計画的な砲撃であったと結論付けられています。ニキータ・フルシチョフも、回顧録において、この事件について曖昧な説明を残しています。1994年、ロシア大統領ボリス・エリツィンは、冬戦争を侵略戦争として非難しました。

1941年のマイニラ砲撃

継続戦争中、フィンランド軍はマイニラ村を占領する際に、プロパガンダ効果を狙って同村を砲撃しました。これは、ソ連による1939年の事件とは対照的に、フィンランド側の行為であり、その目的は、ソ連のプロパガンダを逆手に取ったものでした。

まとめ

マイニラ砲撃事件は、ソ連による偽旗作戦であり、冬戦争勃発の直接的な引き金となった事件です。この事件は、国際法違反であり、ソ連の侵略性を世界に示すこととなりました。この事件の真相解明は、歴史家の地道な調査と、機密文書の公開によってなされたものです。この事件は、国際紛争における情報操作の危険性、そして、歴史の真実を明らかにする重要性を改めて示しています。現在でも、この事件は、国際関係における偽旗作戦の典型的な事例として研究されています。

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