マイリンダ・ケルメンディ

マイリンダ・ケルメンディ：コソボ初のオリンピック金メダリスト

マイリンダ・ケルメンディ（Majlinda Kelmendi、1991年5月9日 - ）は、コソボのペヤ出身の柔道選手です。階級は52kg級で、段位は2段です。彼女は、コソボが独立して間もない時期に、同国初のオリンピック金メダルを獲得し、国民的英雄となりました。

幼少期から才能開花まで

ケルメンディは8歳の時に柔道を始めました。ドリトン・クカ・コーチの指導の下、ヨーロッパのジュニア国際大会で数々のメダルを獲得し、着実に力をつけていきました。2009年には、世界ジュニア52kg級で優勝を果たします。この大会では、コソボがまだIOCに承認されていなかったため、IJF（国際柔道連盟）名義での出場となりましたが、表彰式ではIJFの旗が掲揚され、コソボの国歌が初めて国際スポーツ大会の場で演奏されました。当時、ケルメンディは世界チャンピオンの中村美里を破ってオリンピックで優勝することを夢見ていましたが、後にそれは現実のものとなります。

シニアでの活躍と国籍問題

2010年には、シニアの国際大会であるグランプリ・チュニスで優勝。世界選手権にも出場しますが、3回戦で敗退。その後、ヨーロッパジュニア選手権で2連覇を達成する一方で、世界ジュニアでは5位に終わり、連覇はなりませんでした。2011年8月の世界選手権では2回戦で敗れますが、10月には国際大会で3大会連続優勝を果たします。当時、コソボオリンピック委員会(OCK)はIOCのメンバーとして承認されていなかったため、ケルメンディはIJF主催の国際大会ではIJF、それ以外の国際大会ではアルバニアの名の下で参加していました。国際大会で結果を出すにつれて、アゼルバイジャンを始めとするいくつかの国から、多額の報酬と引き換えに国籍変更の打診を受けますが、ケルメンディはコソボ代表としての出場を強く望み、これらの誘いを全て拒否しました。

オリンピックへの道

2012年4月、IJFがコソボの加盟を承認。しかし、IOCはケルメンディに対し、コソボ代表または個人参加でのオリンピック出場は認められないため、コソボとともに市民権を有するアルバニア代表として出場するようにと伝えました。ケルメンディはアルバニアのパスポートも所有しており、アルバニア代表として国際大会に出場した経験があったため、ロンドンオリンピックにはアルバニア代表として出場することになります。しかし、3回戦で敗退という結果に終わりました。2013年以降は、国際大会でコソボ代表としての出場が認められるようになり、グランドスラム・パリでの2位、ヨーロッパ選手権での3位を経て、8月の世界選手権では決勝で地元ブラジルのエリカ・ミランダを破り、見事優勝を果たしました。

コソボ初の金メダル

2016年、ケルメンディはリオデジャネイロオリンピックにコソボ代表として出場。準々決勝で前回オリンピックで敗れた相手に勝利し、準決勝では世界チャンピオンの中村美里を破って決勝に進出。決勝ではイタリアのオデッテ・ジュフリーダを破り、コソボの選手として初めてとなるオリンピック金メダルを獲得しました。この勝利は、コソボ国民にとって大きな喜びとなり、ケルメンディは国民的英雄として迎えられました。

引退とその後

2017年以降も、グランドスラム・パリやヨーロッパ選手権で優勝するなど、国際大会で活躍を続けましたが、2021年10月に現役引退を表明しました。引退後も、柔道を通じてコソボのスポーツ振興に貢献しています。

マイリンダ・ケルメンディは、その卓越した柔道の才能に加え、コソボ代表としての誇りを持ち続けた強い意志を持つアスリートとして、世界中の人々に感動を与え続けています。

主な戦績

2009年 - 世界ジュニア 優勝
2010年 - グランプリ・チュニス 優勝
2013年 - ワールドマスターズ 優勝
2013年 - 世界選手権 優勝
2014年 - 世界選手権 優勝
2016年 - リオデジャネイロオリンピック 優勝

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