マウスピース (スポーツ)

マウスピースとは

マウスピースは、スポーツなどの際に口内に装着し、歯やその周囲組織を保護する器具です。特に、ボクシングのような格闘技や、ラグビー、アメリカンフットボールなど激しい接触を伴うコンタクトスポーツで広く使用されています。近年では、野球、バスケットボール、サッカーなどのスポーツ、さらにはスノーボードのようなウィンタースポーツでも利用されることがあります。

概要

マウスピースは、試合中に歯列をしっかりと噛み合わせることで、歯自体の損傷や、歯による口内の裂傷を防ぎ、脳への振動を軽減する役割を果たします。マウスガードやガムシールドとも呼ばれ、主に樹脂で作られています。歯と歯が適切に噛み合うことで、装着していると普段以上の筋力を発揮できるという意見もあります。

マウスピースには、大きく分けて上顎に装着するシングルタイプと、上下の歯で噛むようにするダブルタイプがあります。ダブルタイプの場合、呼吸を確保するために空気の通り道が設けられています。

マウスピースによる口内損傷の予防効果は高く、アメリカンフットボールのように激しい接触を伴うスポーツでは、着用が義務付けられていることで、他の競技よりも口の中を怪我する確率が低いというデータもあります。ある調査では、マウスピースの着用によって口や顎の怪我の発生率が大幅に減少したという報告もあります。

歴史

1892年、イギリスの歯科医ウルフ・クラウスがボクサー向けにマウスピースを作り始めたのが始まりとされています。当初は天然ゴム樹脂や歯科で使用されるガタパーチャが使用されていました。その後、様々な競技で装着がルール化されたり、競技連盟・団体が装着を推奨したことで、使用者が増加していきました。

近年では、マウスピースにセンサーを取り付け、選手や兵士の脳へのダメージを感知し、休息させる判断材料としても活用されています。

効果

顎や口腔内の保護: マウスピースは、顎関節への衝撃を緩和し、歯、舌、口腔内の粘膜を保護します。
脳震盪の抑制: 頭部、顎、首の筋肉を固定し、衝突時の脳への衝撃を緩和することで、脳震盪の発生を抑制します。
心理的効果: 安心感や競技への集中力を向上させる効果があります。また、噛み合わせが整うことでバランス感覚などの機能も向上すると言われています。

種別

マウスピースは、製作方法によって市販品とオーダーメイド品に分けられます。

市販品

比較的安価で手軽に入手でき、自分で簡単に作成できるのがメリットです。以前は既製品を購入してそのまま使用していましたが、現在では熱湯で柔らかくした後、口内に入れて噛み、自分の歯型に合わせて成形するタイプが一般的です。ただし、フィット感が悪いものを使用したり、間違った噛み合わせで使用すると逆効果になる可能性があります。

オーダーメイド品

競技に合わせて肉の厚さや噛み合わせなどを指定できるのがメリットです。以前はトップアスリートに限られていましたが、近年では製作技術の普及やコストの低下により、手軽に自分専用のマウスピースを作成できるようになりました。特に、装着時の競技遂行上の阻害要因であった「しゃべりにくさ」が市販品と比較して大きく改善されており、アイスホッケーやラグビーのように口頭で意思伝達を図りながらプレーする競技で好まれています。また、色を自由に配色できるため、デザイン性の高いマウスピースも人気があります。

使用状況

マウスピースの着用は、競技によって義務化、一部義務化、推奨というように異なります。

義務化: ボクシングなどの格闘技、アメリカンフットボール（NFLでは一部のみ）
一部義務化: ラグビー（高校生以上）、ラクロス
推奨: 野球、ソフトボール、バスケットボール、サッカー、バレーボールなど

近年では、ラグビーにおいて脳震盪の疑いを検知する衝撃センサー内蔵のマウスピースがテストされ、一部の大会で導入されています。

その他

ボクシング漫画などでは、試合中に選手が打撃を受けてマウスピースを吐き出すシーンがよく見られますが、実際には試合中にマウスピースが落ちるケースは比較的少ないです。プロの試合では、マウスピースが落下しても試合が続行されることが多く、レフェリーがマウスピースを拾ってセコンドに渡すことがあります。しかし、アマチュアの試合などでは、試合を中断してマウスピースの再装着が義務付けられることが多いです。

また、頭部への打撃や絞め技によって失神した選手の呼吸を確保するため、レフェリーがマウスピースを取り出すことがあります。

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