マカオドッグレースクラブ

マカオドッグレース：栄光と終焉

マカオ特別行政区でかつて盛況を極めたドッグレース。その歴史、興隆、そして閉鎖までの軌跡をたどります。

誕生と最初の閉鎖

マカオにおけるドッグレースの起源は1931年8月まで遡ります。庶民の娯楽として人気を博し、施設拡張のため新たなレース場が建設されるほどでした。しかし、日中戦争の影響による不況や他のギャンブル施設との競争激化により、1938年には残念ながら閉鎖の道を辿ります。その後、レース場は中国からの難民の住処となり、放置された状態が続きました。

再興と黄金時代

それから25年後の1963年、ドッグレース場は復活を遂げます。上海のドッグレース場の調教師であったオーストラリア人らの尽力により、上海から出走犬の表示板、レース開始の鐘、そして兎のダミーを走行させる機械などが移設されました。再開後、マカオのみならず香港からも多くのファンが訪れ、再び人気を博します。ラジオやストリーミング中継、香港のケーブルテレビでの専用チャンネル放送など、場外投票サービスにも力を入れたことがその成功を支えました。

衰退と閉鎖

2002年のカジノ国際開放以降、マカオには高級カジノが続々と進出しました。ドッグレースは旧世代の娯楽として人気が低下し、同時に高まる動物愛護の意識も、レース存続を困難にしました。2018年6月30日、最後のレースが開催され、7月21日、マカオドッグレース場は歴史の幕を閉じました。

レースの種類と賭け方

マカオのドッグレースでは、様々な種類の犬券が発売されていました。最小購入単位は10マカオ・パタカ。主な種類は以下の通りです。

獨贏（単勝式）: 1着を予想するシンプルな賭け方
位置1（複勝式1着）: 1着、2着、3着のいずれかに的中すれば当選
位置2（複勝式2着）: 1着、2着のいずれかに的中すれば当選
連贏（連勝複式）: 複数レースの1着を予想する賭け方
三重彩（3連勝単式）: 3レースの1着を順番通りに予想する賭け方
孖Q（ダブル）: 指定された2レースの連勝を予想する賭け方、1日に3回実施

小頭数のレースにも関わらず、高配当が期待できることも特徴でした。

競走犬と調教師

競走犬は主にグレイハウンド種で、2歳頃から調教が始まり、怪我などがなければ5年ほど現役生活を送ります。犬は能力に応じて1級から6級に分類され、下級クラスの犬は一定の条件を満たすと引退となります。能力の高い犬は引退後に繁殖犬となることもありました。調教師は10名ほどが所属し、1厩舎あたり60～80頭の犬を管理していました。毎週1回程度のペースでレースに出走していました。賞金はクラスによって異なり、最高賞金は3300マカオ・パタカでした。4着まで賞金が支払われ、全クラスで4着賞金は100マカオ・パタカでした。

レース場とアクセス

レースはカニドロームドッグレース場（筷子基・跑狗場）で開催され、毎週水曜日と金曜日のみ休みで、ナイターレースが1日18競走行われていました。19:30頃に第1競走が始まり、23:45頃には最終レースとなる第18競走が行われました。アクセスは、複数のバス路線を利用して「逸園賽狗場」バス停で下車することができました。

マカオドッグレースは、マカオの歴史と文化を語る上で重要な要素の一つでした。その栄枯盛衰は、マカオ社会の変遷を反映していると言えるでしょう。

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