マクラーレン・570S

マクラーレン スポーツシリーズ：570Sとその兄弟たち

2015年、マクラーレン・オートモーティブは新たなスポーツカーシリーズの第一弾として570Sを発表しました。これは、それまで同社が展開していたスーパーカーセグメントとは異なる、より身近な価格帯のモデルとして位置づけられました。しかし、その性能は決して妥協されたものではありません。F1で培われた技術を結集し、軽量かつ高性能なマシンとして多くのファンを魅了しました。

570S：スポーツシリーズの旗艦

570Sは、カーボンファイバー製のモノコックシャシー「モノセルII」を採用することで、優れた軽量性を実現しています。乾燥重量はわずか1313kgと、その俊敏な走りを実現する上で大きな貢献を果たしています。570馬力の3.8リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、力強い加速と最高速度328km/hを可能にしています。

スタイリングはマクラーレンのアイデンティティであるディヘドラルドアや、空力性能を重視したシュリンクラップドデザインを採用。フロントスポイラーやフルLEDヘッドライトなど、他のモデルとの共通性も感じられます。インテリアは、視認性と操作性を重視したデザインで、7インチのタッチスクリーンによる情報システムも備えています。サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式で、状況に応じて「ノーマル」「スポーツ」「トラック」の3つのモードを選択可能。サーキット走行から日常のドライブまで、幅広いシーンに対応します。

540C：日常の使いやすさを追求

570Sに続くスポーツシリーズの第二弾として登場した540Cは、570Sよりもパワーを抑え（540馬力）、乗り心地を向上させることで、より日常使いしやすいモデルとして設計されています。570Sがスポーツカーとしての走りに重点を置いているのに対し、540Cは快適性と扱いやすさを両立させている点が大きな特徴です。そのため、アメリカ市場では販売されませんでしたが、世界各国で高い評価を得ました。

570GT：ツーリングに最適化

2016年に発表された570GTは、スポーツシリーズのラインナップの中でも、ツーリング性能を重視したモデルです。570Sと比べてサスペンションはややソフトに設定され、遮音性も向上。さらに、ラゲッジスペースの拡大とグラスルーフの採用により、長距離ドライブにも快適に対応できるよう設計されています。より豪華で洗練されたインテリアも特徴で、レザー素材を豊富に使用したシックな空間がドライバーを迎えます。リアスポイラーは570Sよりも高く設定されており、高速走行時の安定性を確保しています。

600LT：究極の走りへの追求

600LTは、570Sをベースにした高性能モデルで、「ロングテール」の名の通り、空力性能を重視したデザインが特徴です。570Sに比べて30馬力アップの600馬力を発揮し、軽量化も図られています。固定式の大型リアウイングなど、サーキット走行を意識した設計がなされており、究極の走りを実現するモデルとして高い人気を誇っています。限定生産モデルのため、入手困難な一台となっています。

スポーツシリーズの系譜

マクラーレン・オートモーティブのスポーツシリーズは、570Sを筆頭に、それぞれのモデルが異なる個性を持ちながら、高い走行性能とマクラーレンブランドのアイデンティティを共有しています。540Cの日常使いやすさ、570GTのツーリング性能、そして600LTのサーキット志向など、多様なニーズに対応するモデル展開が、このシリーズの人気を支えていると言えるでしょう。2021年3月に生産が終了したものの、その高い完成度と魅力は、多くの自動車ファンに記憶されています。

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