マクラーレン・MCL33

マクラーレンMCL33：期待と挫折の狭間で疾走した2018年シーズン

2018年、マクラーレンはルノーエンジンを搭載したMCL33でF1世界選手権に挑みました。伝統のパパイヤオレンジにブルーが映えるそのマシンは、多くの期待を背負いながら、波乱に満ちたシーズンを駆け抜けたのです。

開発とデザイン：進化と課題

2月23日に発表されたMCL33は、前年までパートナーシップを結んでいたホンダからルノーへとパワーユニットを変更。これに伴い、シャシー後部、ギアボックス、リアサスペンション、冷却レイアウトなどが全面的に見直されました。

特徴的なのは、他チームと同様にコンパクトに設計されたサイドポッドと、多くのスリットが刻まれたフロントウイングステーです。さらに、フロアには縦横無数のスリットが配置され、空力性能の最適化が追求されていました。しかし、全チーム唯一、エアインダクションボックス下に冷却装置を配置しない「センタークーリング」を採用しなかった点が、後のトラブルに影を落とすことになります。

シーズン中盤には、先端に3つの穴を開けた特徴的なノーズを持つ「Bスペック」が投入されました。これは空力性能向上のための抜本的なアップデートでしたが、期待されたほどの効果は発揮できませんでした。

2018年シーズンの軌跡：輝きと影

ドライバーは、フェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンのコンビが続投。しかし、プレシーズンテストではPU関連よりもシャシー関連のトラブルが頻発。同じルノーエンジンを使用するレッドブルやルノーチームには見られない状況に、マクラーレンの設計に問題があるとの指摘が出ていました。

開幕戦オーストラリアGPでは、アロンソが5位、バンドーンが9位とダブル入賞を果たし、チームはひとまず安堵しました。その後もスペインGPまでは連続入賞を達成するなど、好調を維持。アロンソはBスペック投入後のスペインGPで初のQ3進出を果たすなど、勢いを見せていました。

しかし、モナコGP以降はマシントラブルによるリタイアが響き、チームは失速。予選で好成績を残したものの、決勝ではトラブルに見舞われたり、アロンソの好走に助けられたりという展開が続きました。フランスGPでは両ドライバーがQ1敗退、ノーポイントという結果に終わるなど、マシンの戦闘力不足が露呈しました。ザク・ブラウンCEOも、風洞テストでは現れない空力問題の存在を認め、前年モデルよりもダウンフォースが少ないことを明かしています。

シーズン後半には、予選Q1敗退やテールエンダーになるなど低迷が続き、バンドーンのマシンにはダウンフォース不足の問題まで発生。最終的にはコンストラクターズランキング6位、62ポイントを獲得しましたが、これは前年の76ポイントを下回る結果となりました。ルノーエンジンへの期待は、残念ながら裏切られた形となりました。

MCL33の技術仕様

MCL33は、カーボンファイバーコンポジット製のモノコック、ウィッシュボーン式サスペンション、ルノーR.E.18パワーユニット、ピレリPゼロタイヤなどを採用。詳細なスペックは下記の通りです。

シャシー

形式：マクラーレン MCL33
モノコック：カーボンファイバーコンポジット製
フロントサスペンション：プッシュロッド式
リアサスペンション：プルロッド式
重量：733kg（ドライバー含む、燃料は含まず）

パワーユニット（ルノーR.E.18）

型式：ルノー R.E.18
排気量：1,600cc V型6気筒
最高回転数：15,000rpm
燃料容量：105kg

トランスミッション

ギアボックス：8速
* ギア操作：電動油圧式シームレスシフト

MCL33は、マクラーレンの技術力を結集したマシンでしたが、ルノーエンジンへの移行、設計上の課題、そして空力問題など、克服すべき多くの困難を抱えていました。このマシンは、マクラーレンが将来に向けてさらなる進化を遂げるための重要な教訓となったと言えるでしょう。

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