マクラーレン・MCL35

マクラーレンMCL35とMCL35M：2020年と2021年のF1挑戦

マクラーレンMCL35は、2020年シーズンのF1世界選手権を戦うために開発されたレーシングカーです。テクニカルディレクター、ジェームズ・キー率いるチームによって開発され、ルノー製パワーユニットを搭載した最後のマクラーレンマシンとなりました。前モデルMCL34をベースに、ノーズ形状の改良、フロントサスペンションの変更、インダクションボックスのデザイン変更など、空力性能と冷却効率の向上を図っています。軽量化のためマット塗装が施され、特徴的なパパイヤオレンジとブルーのカラーリングも配置変更されました。

MCL35は、カルロス・サインツとランド・ノリスという強力なドライバーコンビを擁し、シーズン開幕戦オーストラリアGPはCOVID-19の影響で中止となりましたが、その後オーストリアGPでノリスがキャリア初の表彰台を獲得するなど、好成績を収めました。特にイタリアGPではサインツが2位に入り、2012年以来となる表彰台複数回獲得という結果を残しました。最終的に、コンストラクターズランキングで3位を獲得という輝かしい成績をおさめました。ポイント獲得を逃したのはロシアGPのみという高い安定性を示しました。

MCL35M：メルセデスPU搭載による進化

2021年シーズンに向け、マクラーレンはメルセデスとのパワーユニット供給契約を発表。それに伴い、MCL35をベースに開発されたのがMCL35Mです。Mはメルセデス製パワーユニット(Mercedes)と、多様な変更(Modify)を意味します。レギュレーション変更がない年だったため、トークン制によるアップデートが中心となり、メルセデス製パワーユニットに合わせてリアセクションを中心に大幅な改良が加えられました。オフシーズン中にアップデートを集中させることで、メルセデスPUに最適化されたマシンを作り上げました。

MCL35Mは、ノリスと新たに加入したダニエル・リカルドの強力なドライバーラインアップで戦いました。メルセデス製パワーユニットの採用により、マシンの戦闘力は大幅に向上。ノリスは4回の表彰台を獲得し、リカルドはイタリアGPで優勝、ノリスは2位に入り、マクラーレンは2010年以来となる1-2フィニッシュを達成しました。これは、マクラーレンにとって9年ぶりの優勝であり、チームにとって大きな飛躍となりました。

マクラーレンMCL35/MCL35Mの技術仕様

シャシー

型式: MCL35
モノコック: カーボンファイバーコンポジット
サスペンション: フロント/リアともにウィッシュボーン式
重量: 746 kg (燃料、ドライバー含まず)
ブレーキシステム: 曙ブレーキ工業製
タイヤ: ピレリ P-Zero
ホイール: エンケイ
塗装: アクゾノーベル/シッケンズ
冷却システム: マレリ

パワーユニット (2020年：ルノー、2021年：メルセデス)

型式: ルノー E-Tech 20 / メルセデス M12 E Performance
排気量: 1600 cc V型6気筒
最高回転数: 15,000 rpm
エネルギー回生システム(ERS): MGU-K, MGU-H

トランスミッション

ギアボックス: 8速前進、1速後退
* ギア操作: 電動油圧式シームレスシフト

MCL35とMCL35Mは、マクラーレンの技術力の高さ、そしてチームの努力を象徴するマシンと言えるでしょう。2020年から2021年にかけてのF1での活躍は、マクラーレンの復活を印象づけるものでした。 これらのマシンが、将来のマクラーレンの開発にも大きな影響を与えたことは間違いありません。

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