マクラーレン・MP4-19

マクラーレンMP4-19/MP4-19B：革新と苦闘の2004年シーズン

2004年、マクラーレンはエイドリアン・ニューウェイがテクニカルディレクター、マイク・コフランがデザイナーを務めたMP4-19でF1世界選手権に参戦しました。MP4-18の設計思想を受け継ぎ、特徴的なシャープなノーズと上下に湾曲した3枚のフロントウイングが目を引くマシンでした。しかし、この革新的な設計は、シーズンを通して数々のトラブルを引き起こすことになります。

まず、当初のモノコックはドライバーにとって窮屈で、改良する過程でマシンバランスが崩れてしまいました。さらに、メルセデス・ベンツのFO110Qエンジンの開発遅れも重なり、完走すら難しい状況が続きました。開幕3戦ではキミ・ライコネンがすべてマシントラブルでリタイヤ。特にエンジン関連のトラブルは深刻で、バーレーンGPでは炎を上げてリタイヤする場面もありました。シーズン前半は、14回のうち3回しか入賞できず、8回もリタイヤするなど、チームは苦戦を強いられました。ライコネン自身もバーレーンGP時点でタイトル争いを諦めたと語っています。

しかし、チームは諦めませんでした。地道な改良を重ね、カナダGPとアメリカGPではダブル入賞を果たし、マシンの信頼性向上に目処が立ち始めます。フランスGPでも続くダブル入賞で、着実にパフォーマンスを上げていきました。この時点では表彰台には届いていませんでしたが、マシンの信頼性が劇的に改善されたことは大きな収穫でした。

シーズン中盤、イギリスGPから大幅に改良されたMP4-19Bが投入されます。MP4-19Bはモノコックから設計を見直し、リヤ周りはフェラーリF2004の影響が見られるなど、大幅な変更が加えられました。サイドポンツーンのアンダーカットや大型化されたエンジンカバーなど空力性能の向上を目指した改良が施され、冷却システムも強化されました。高速サーキットであるモンツァでは、翌年のMP4-20を彷彿とさせる太目のノーズもテストされましたが、冷却の問題から、このノーズはモンツァでのみ使用されました。

MP4-19B投入後、ライコネンはイギリスGPでポールポジションを獲得、決勝ではシューマッハに次ぐ2位表彰台を獲得しました。その後も2度のリタイヤがありましたが、ベルギーGPで待望の優勝を飾ります。シーズン終盤にも2度の表彰台を獲得しましたが、前半戦の不調とリタイヤの影響で、最終順位は7位となりました。クルサードはコンスタントに入賞を重ねましたが、表彰台には上がることができず、ランキング10位でシーズンを終えました。長きに渡りマクラーレンに貢献したクルサードは、このシーズン限りでチームを去ることになります。150戦というマクラーレン在籍記録は、チームの歴史に刻まれることとなりました。最終戦ではフォトセッションが行われましたが、決勝レースでは11位と入賞を逃し、マクラーレンでの最後のレースを終えました。

MP4-19/MP4-19Bは、革新的な技術とトラブルとの戦い、そしてドライバーの力強い走りを象徴する、マクラーレンの歴史における重要な1ページを刻んだマシンと言えるでしょう。

スペック

シャーシ: MP4-19, MP4-19B
クラッチ: AP
ブレーキキャリパー: AP
ブレーキディスク・パッド: カーボンインダストリー
ホイール: エンケイ
タイヤ: ミシュラン
ダンパー: ペンスキー・マクラーレン
ギヤボックス: 7速セミオートマチック/カーボンファイバー製ケーシング
エンジン: メルセデスFO110Q (V型10気筒, 90度, 3000cc)
スパークプラグ: NGK
* 燃料・潤滑油: モービル

もう一度検索