マグダラのマリアと聖ウルスラのいる聖母子

ジョヴァンニ・ベッリーニによる『マグダラのマリアと聖ウルスラのいる聖母子』（伊:Madonna col Bambino tra le sante Maria Maddalena e Orsola）は、1490年に制作された板上の油彩画であり、ルネサンス期のヴェネツィア派絵画の傑作として知られています。この作品は、聖母子を中心に複数の聖人を配した「聖会話」というジャンルに属しており、その中でも特に優れた例とされています。

かつては17世紀のイタリア人画家カルロ・マラッタのコレクションに所蔵されていましたが、現在はスペインのマドリードにあるプラド美術館に収蔵されており、多くの美術愛好家や研究者によって鑑賞されています。

ベッリーニが描いた『聖母子と聖カタリナとマグダラのマリア』との間には、顕著な類似性が見られます。この2つの作品は、同じ構図や登場人物の配置を共有しており、当時この種の絵画が非常に人気があったことを示しています。これらの作品群の中には、ベッリーニの工房で制作されたものや、ベッリーニ自身が部分的に手掛けたものも含まれており、ウルビーノやニューヨークのモルガン・ライブラリーにも同様の作品が所蔵されています。

プラド美術館に所蔵されている『マグダラのマリアと聖ウルスラのいる聖母子』には、聖マグダラのマリアと聖ウルスラが描かれています。この作品とヴェネツィアのアカデミア美術館にある作品との主な違いは、右側に描かれている人物が異なる点と、左側に描かれている聖人の衣服のデザインが異なっている点です。このような相違点にもかかわらず、両作品は非常に良く似ていることから、プラド美術館の作品はベッリーニの熟年期の作品であると考えられています。

しかし、この作品がベッリーニの真作であるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれています。一部の研究者は、ベッリーニ自身の手による作品である可能性が高いと主張していますが、別の研究者は、工房の作品であるか、あるいはベッリーニの作品を模倣した複製である可能性も指摘しています。この作品が真作であるか否かという議論は、ベッリーニの画業とルネサンス期の絵画制作に関する理解を深める上で、非常に重要なポイントとなっています。

いずれにせよ、『マグダラのマリアと聖ウルスラのいる聖母子』は、ジョヴァンニ・ベッリーニの卓越した画力を示すとともに、当時のヴェネツィア派の絵画様式を代表する重要な作品であることに変わりはありません。その美しい色彩と繊細な描写は、観る者を魅了し、ルネサンス美術の魅力を今に伝えています。

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