マグダレンの祈り

映画『マグダレンの祈り』について

『マグダレンの祈り』（原題: The Magdalene Sisters）は、2002年に公開されたアイルランド・イギリス合作の映画です。ピーター・マランが監督・脚本を務め、ジューン・ゴールディングの回想録を原案としています。この作品は、1996年までアイルランドに存在したマグダレン洗濯所（マグダレン収容施設）を舞台に、そこで生活を強いられた女性たちの過酷な現実を描いています。

マグダレン洗濯所とは

マグダレン洗濯所は、カトリックの修道院が運営していた施設で、アイルランド各地に10か所ほど存在しました。表向きは洗濯施設でしたが、実際には、婚外交渉によって妊娠した女性、道徳的に堕落していると判断された女性、身寄りのない少女などが強制的に収容されていました。施設では、ほぼ無報酬で洗濯作業などの重労働を強いられ、その労働は「罪を洗い流す」と意味づけられていました。

収容された女性たちは、生まれた子供の権利を放棄する誓約書にサインさせられ、子供たちはアメリカへ養子縁組として送られました。しかし、実際には教会が金銭を得るための手段であり、女性たちは過酷な労働の中で命を落とすこともありました。亡くなった女性たちは、人目に触れないよう施設の敷地内に埋められていました。

施設を出ることは可能でしたが、その際には施設での出来事を口外しないよう厳しく口止めされました。1973年にはカトリックの特別な地位を認める憲法の条文が削除され、1970年代には養子縁組も廃止されました。しかし、施設の実態は長らく公になることはありませんでした。1993年に施設の敷地内から多数の遺体が発見されたことをきっかけに、その実態が明るみに出ました。国家も関与していたことから、国民を震撼させるスキャンダルとなりました。1996年に最後の施設が閉鎖され、マグダレン洗濯所はすべて消滅しました。

2013年には、調査報告書が公表され、当時のアイルランド首相が、非人道的行為に国家が関与していたことを正式に謝罪しました。

あらすじ

1964年のある日、3人の少女がマグダレン洗濯所に収容されます。従兄弟にレイプされたマーガレット、未婚の母となったローズ、美貌が男を誘惑するとみなされて孤児院から送られてきたバーナデット。彼女たちは、洗濯などの重労働、私語厳禁、囚人服のようなユニフォームの着用を強制され、修道女や神父からの虐待に苦しむ日々を送ります。

作品の評価

『マグダレンの祈り』は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞するなど、国際的に高い評価を得ています。映画は、マグダレン洗濯所の非人道的な実態を告発するとともに、そこで生きた女性たちの苦しみと尊厳を描き出しています。その衝撃的な内容から、観る人に深い感動と怒りを呼び起こす作品です。

キャスト

この作品には、以下の俳優が出演しています。

マーガレット役：アン・マリー・ダフ
ローズ役：ドロレス・オリアダン
バーナデット役：アイリーン・ウォルシュ

その他の声の吹き替えとして、北條文栄、青木誠、佐々木省三、加藤将之、遠藤綾、浅井清己らが参加しています。

スタッフ

監督・脚本：ピーター・マラン
原案：ジューン・ゴールディング
プロデューサー：中嶋唯雄／本松征治
字幕翻訳：古田由紀子
吹替翻訳：石原千麻
録音・調整：長井利親
制作担当：小川眞紀子／永吉栄子
制作：ムービーテレビジョン

外部リンク

マグダレンの祈り - allcinema
マグダレンの祈り - KINENOTE
The Magdalene Sisters - オールムービー（英語）
* The Magdalene Sisters - IMDb（英語）

もう一度検索