マグダレーナ/『きよしこの夜』誕生秘話

『マグダレーナ／『きよしこの夜』誕生秘話』は、1988年に西ドイツで製作されたドラマロマンス映画です。モニカ・トイバーが監督と脚本を務め、主演にはナスターシャ・キンスキー、スティーヴ・ボンドが起用されました。その他、デビッド・ワーナー、ギュンター・マイスナー、フランコ・ネロ、アンソニー・クエイルといった実力派俳優たちが脇を固めています。日本でのビデオ発売時には、『マグダレーナ／美しき娼婦』という邦題に改められました。

物語の舞台は19世紀のオーストリア。長期にわたる戦争の影響で、多くの人々が家や家族を失い、社会は混乱を極めていました。一部の人々は生活のために村を襲撃し、家財を奪う盗賊行為に手を染めるなど、治安は悪化していました。そんな時代背景の中で、オーベンドルフという小さな村に新たな神父が赴任してきます。

この村では、有力者であるサイドル男爵と、病気療養中のノストラー神父に代わって教会を管理する修道院長との間で、不正な取引が結ばれていました。男爵が領地を拡大することに対し、教会が見て見ぬふりをする代わりに、男爵は教会へ多額の寄付をするという密約です。こうした状況の中、強い信念を持つ若いジョセフ・モア神父が新任として派遣されてきます。

モア神父の存在は、修道院長と男爵にとって危険なものでした。彼がこの裏取引に気づけば、自分たちの地位が危うくなると考えた二人は、大司教やノストラー神父に対し、モア神父が聖職に不適格であると訴え出ます。しかし、大司教たちはモア神父を深く信頼しており、彼らの訴えを退けました。一方、戦争から帰還した騎兵隊のバーダーとハンスは、酒場で自慢話をしていましたが、そこに現れた男爵から、息子のコンラッドを置き去りにしてきたことを厳しく非難されます。

モア神父は、しばらく滞在させてもらうことになった村の教師、フランツ・グルーバーの家を訪ねます。そこで彼は、フランツが音楽を作り出すことを趣味としていると知ります。その夜、バーダーとハンスをもてなしていた酒場で働く女性、マグダレーナが登場します。彼女は突然押し入ってきた隊長と家宅捜索を巡って言い争いになります。

翌日、モア神父は各地で無法者たちを率いて襲撃を行い、革命を目指すヤンサと偶然遭遇します。その晩、より多くの村人が教会に足を運ぶようにしたいと考えたモア神父は、フランツを伴って再び酒場を訪れます。そこでモア神父はマグダレーナと再会し、互いに強く惹かれ合い、恋に落ちます。フランツが演奏する調べが、二人の間にロマンチックな空気を生み出します。

しかし、マグダレーナの人生は決して平穏ではありませんでした。彼女はヤンサと迎えに来る約束を交わしているほか、幼い頃に男爵に養子に取られた後、虐待を受け、さらには身売りされたという悲惨な過去を抱えています。男爵はモア神父を村から追い出すために、マグダレーナに神父と関係を持ったという偽りの書類に署名するよう強要するなど、次々と困難が彼女に降りかかります。さらに、男爵は今もマグダレーナに執着しており、彼女が抵抗する中で強引にキスを迫り、その際に彼女は負傷してしまいます。

本作は、混乱の時代における教会の腐敗と権力争い、そしてその中で芽生える許されない愛という重厚なテーマを扱っています。新任神父と、過酷な運命に翻弄される女性の間に生まれた絆が、物語の中心を成しています。また、音楽を愛する教師フランツ・グルーバーの存在が、後に世界中で広く歌われることになる名曲の誕生を示唆する重要なエピソードとして織り込まれており、感動的な人間ドラマに深みを与えています。ナスターシャ・キンスキー演じるマグダレーナの複雑な心情、そしてスティーヴ・ボンド演じるモア神父の葛藤が見どころとなっています。アルマンド・ナンヌッツィによる撮影、ジャンニ・クァランタによるプロダクションデザイン、クリフ・エデルマンによる音楽など、一流のスタッフが作品世界を構築しています。

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