マザメ

フランス南部、羊毛と皮の歴史が息づく町 マザメ

フランス南西部に位置するオクシタニー地域圏、その一角にタルヌ県があり、マザメはその県土に含まれるコミューンです。この町は、隣接するオード県との県境近くに位置しており、広域で見ると、オクシタニー地方の二大都市であるトゥールーズとベジエからほぼ等しい距離にあります。

現在のマザメには約1万人の人々が暮らしており、周辺を含めた都市圏全体では約2万5千人の人口を抱え、その中心としての役割を果たしています。

デレナージュと製革業が生んだ産業の隆盛

マザメの歴史を語る上で特筆すべきは、150年以上にわたり町の基盤を支えた独自の産業です。それは、羊や山羊の皮から繊維を傷めずに羊毛を取り除く「デレナージュ（délainage）」と呼ばれる特殊な技術と、それに付随する製革業でした。

このデレナージュ産業は、マザメに産業革命とも呼べるほどの変革をもたらしました。特に19世紀半ば以降、地理的な不利な状況を乗り越え、マザメはこの独自の活動を発展させます。その結果、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカ、ニュージーランド、ウルグアイといった遠隔地との間に活発な貿易関係を確立し、町は国際的な産業および商業の中心地として大きく繁栄しました。この国際的な名声は、1980年代半ばまで続いたと言われています。また、デレナージュほど大規模ではなかったものの、製革業もこの羊毛産業の中心地で重要な地位を築いていました。

戦禍からの再建と町の起源

マザメという町が誕生した背景には、過去の受難の歴史があります。アルビジョワ十字軍の時代、シモン・ド・モンフォールによる攻撃は、かつてこの地にあったオプール集落に壊滅的な被害をもたらしました。要塞は破壊され、住民は虐殺されました。この悲劇から逃れることのできた人々が、戦乱が終結し平和が戻った後に、アルネット川のほとりに新たな生活の場を求めました。

彼らがそこに築いた村はマサルネット（Masarnette）と呼ばれ、これが後に発展し、現在のマザメの町となったと伝えられています。

山地の麓、河川と風に恵まれた地理

マザメの地理的な特徴もまた、町の個性を形作っています。町は、ノワール山地やオプール岩山といった地形の麓に位置し、トレの畝間と呼ばれる独特の空洞地形にも近接しています。町の中央部をトレ川とアルネット川という二つの川が流れ、豊かな水資源をもたらしています。

マザメの気候は温暖湿潤ですが、アルン川とアルネット川が形成する谷筋を吹く北風と、南西から吹くオタン風という二つの風の影響を受けています。さらに、町の周辺には多くの湖や池が点在しており、自然豊かな景観を楽しむことができます。これらの地理的要素が、町の産業や人々の暮らしに長らく影響を与えてきました。

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