マシンガン・ケリー

マシンガン・ケリー：禁酒法時代を彩る悪名高きギャング

マシンガン・ケリー、本名ジョージ・ケリー・バーンズは、1895年7月18日にテネシー州メンフィスで生まれました。裕福な家庭に育ち、特に問題を起こすこともなく、ごく普通の子供時代を送ったとされています。しかし、その後の人生は、犯罪と逃亡に彩られた波乱万丈なものでした。

若き日の挫折と犯罪への道

アイドルワイルド中学、そしてメンフィス最古の公立高校であるセントラル高校を卒業後、ケリーは1917年にミシシッピ州立大学に進学し、農業を学び始めます。しかし、大学での生活は彼にとって挫折の連続でした。成績は振るわず、教職員とのトラブルも頻発し、大学生活に馴染むことはできませんでした。

この頃、ジュネーヴ・ラムジーと結婚し、2人の子供をもうけますが、実家からの援助を拒み、タクシードライバーなどで生計を立てていました。しかし、父親がラムジーを嫌っていたことや、経済的な問題から結婚生活はすぐに破綻しました。

1920年代から30年代にかけての禁酒法時代に入ると、ケリーは他の犯罪者たちと同様に密造酒の製造に手を染めます。しかし、メンフィス警察との小競り合いを繰り返した後、ガールフレンドと共に町を離れることを決意。ジョージ・R・ケリーと名前を変え、密造酒の製造や小さな犯罪を繰り返しながら、当局の目を逃れる生活を送ります。

1928年、インディアン居留地で酒の密造を行っていたとしてオクラホマ州タルサで逮捕され、カンザス州レブンワース連邦刑務所で3年の懲役刑を言い渡されます。刑務所では模範囚として過ごし、早期釈放を勝ち取ります。

「マシンガン・ケリー」の誕生

出所後、ケリーはキャサリン・ソーンと結婚します。キャサリンはケリーのためにトンプソン・サブマシンガンを購入し、彼の名を暗黒街に広めるために手段を選ばない人物でした。一部の歴史家は、銀行強盗を繰り返していたケリーに「マシンガン・ケリー」という異名を与えたのはキャサリンであると主張しています。

しかし、1933年7月20日、オクラホマシティで起こした誘拐事件で、彼の犯罪歴は終わりを迎えることになります。ケリーらは、チャールズ・F・アーシェルと彼の友人ウォルター・R・ジャレットを誘拐しますが、犯行現場に指紋などの証拠を残してしまいます。

逮捕、そして「Gメン」伝説

犯行から56日後、ケリーらがメンフィスの隠れ家に潜伏していることが判明。1933年9月26日早朝、FBIとメンフィス警察がケリーの隠れ家を急襲し、ケリーとキャサリンを逮捕しました。

逮捕の際、ケリーは「撃つな、Gメン！」と叫んだと言われています。それまで「政府の役人」を指す言葉であった「Gメン」は、この事件以降FBI捜査官を指す言葉として定着しました。しかし、最近の研究では、この言葉を最初に使ったのはキャサリンであった可能性も指摘されています。FBIは、自身の評判を上げるために、この伝説を利用し続けたとも言われています。

1933年10月12日、ジョージとキャサリンは有罪判決を受け、終身刑を宣告されました。キャサリンと彼女の母親は容疑を否認し続けましたが、1958年に釈放されています。

アーシェル誘拐事件は、アメリカの歴史においていくつかの重要な点で特筆される出来事となりました。それは、最初で最後の映像撮影が許可された連邦刑事裁判であったこと、リンドバーグ法が施行されてから初めての裁判であったこと、そしてJ・エドガー・フーヴァー長官率いるFBIによって解決された最初の大事件であったこと、そして犯人を護送する際に初めて飛行機が使用されたことなどです。

晩年

ケリーはその後21年間を刑務所で過ごしました。アルカトラズ刑務所では「ポップガン・ケリー」というニックネームで呼ばれていました。そして1954年7月18日、自身の59歳の誕生日に、レブンワース連邦刑務所で心臓発作により亡くなりました。

マシンガン・ケリーは、禁酒法時代を象徴する犯罪者の一人として、その悪名は今もなお語り継がれています。

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