マスムーブメント

マスムーブメントの概要

マスムーブメント（mass movement）とは、斜面にある物質が重力によって下方へ移動する現象を指します。この現象は地形の変化を引き起こし、特に山地では山崩れや地すべりとして広く見られます。日本の土地条件では特に顕著であり、これらの現象は地形のプロセスの一部として重要な役割を果たしています。

分類

マスムーブメントには多様な分類方法が存在します。一般的には、動きの速度やメカニズム、物質の種類、動きの様式、移動体の形状、含水比の5つの視点で分類されることが多いです。例えば、1978年にVarnesは、落下（fall）、転倒（topple）、すべり（slide）、流動（flow）の4つに大別し、それぞれの組み合わせも考慮されることを提唱しました。

また、鈴木（2000年）の研究では、匍行や落石、崩落、地すべり、土石流、陥没、地盤沈下、荷重沈下に分けられ、日本地質学会も同様に匍行、滑動、流動、崩落、転倒といった分類を採用しています。

発生の原因

マスムーブメントが発生する要因は素因と誘因に区分されます。素因には地形や地質、水の状態が含まれ、例えば斜面の傾斜や、地層の性質（砂質土や粘性土による動きの違い）があります。誘因には降雨や地震、火山活動があり、特に降雨は土壌や岩石の含水比を増加させ、せん断強度を低下させるため、重要な要因です。

マスムーブメントの力学

マスムーブメントの発生には、駆動力と抵抗力の関係が重要です。駆動力（F_D）は重力の影響で斜面を下る力であり、抵抗力（F_R）は地面が動きを抑える力です。駆動力が抵抗力を上回るときに道が開かれ、マスムーブメントが発生します。

具体的には、駆動力は重力の成分に依存し、抵抗力は物質の性質や斜面の状況によって変化します。安全率（safety factor）という指標を用いて、F_RがF_Dを上回る状態を安全とし、その逆の状態を危険と見なします。

形成される地形

マスムーブメントによって形成される地形は、集団移動地形と呼ばれ、特に重要です。これには様々な地形が含まれ、匍行地形、落石地形、崩落地形、地すべり地形、土石流地形などがあり、それぞれ独自の特徴を持ちます。

例えば、匍行地形では麓屑面が形成され、落石地形には落石窪や崖錐などがあります。崩落地形では崩落地や崩落堆が見られ、地すべり地形では滑落崖や地すべり堆、土石流地形は土石流谷や土砂流原が代表的です。

災害との関連

マスムーブメントは時に災害を引き起こす要因ともなります。特に地すべりは大雨による土壌の飽和で発生しやすく、これにより斜面の安定性が損なわれます。また、地震もマスムーブメントを助長し、過去の例として新潟県中越地震では多くの地すべりや土石流が発生しました。

まとめ

マスムーブメントは、様々な自然条件の影響を受けて発生する地形の変化であり、そのメカニズムや影響は多岐にわたります。これを理解することは、災害の防止や地形管理において非常に重要であり、科学的な知見が求められています。

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