マダイン・サーレハ

マダイン・サーレハは、現在のサウジアラビア北西部に位置する古代都市の遺跡です。かつては「サーリフの町々」を意味する名前で呼ばれ、アル＝ヒジュル（岩だらけの場所）としても知られていました。赤い崖が特徴的なワジの集落Al-`Ulaから約22kmの場所に位置し、古代にはサムード人やナバテア人が居住していました。

特に紀元前1世紀から紀元1世紀頃のナバテア人の遺跡群が中心で、装飾が施された墓石群が特徴的です。ヨルダンにある有名なペトラ遺跡に次ぐ、ナバテア人の重要な遺跡として知られています。また、これよりもさらに古い時代の碑文も発見されており、この地の歴史の深さを物語っています。

しかし、サウジアラビアでは、マダイン・サーレハの遺跡は「呪われた場所」と考えられています。これは、『クルアーン』第15章「アル＝ヒジュル」に、アル＝ヒジュルの民が使徒の警告を聞き入れずに罰を受けたという記述があるためです。そのため、敬虔なサウジアラビア国民の中には、政府が観光を推進しているにもかかわらず、この章句を気にしない観光客に対して複雑な感情を抱く人もいます。

2008年、マダイン・サーレハはユネスコの世界遺産に登録されました。これはサウジアラビアにとって初の世界遺産登録であり、その文化的・歴史的な価値が国際的に認められたことを意味します。

世界遺産としての登録基準は以下の通りです。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

マダイン・サーレハは、古代ナバテア人の文化、建築技術、そして精神世界を今に伝える貴重な遺跡です。同時に、この地に対する信仰や歴史的背景を知ることで、より深く理解することができます。

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