マダラコウラナメクジ

マダラコウラナメクジ：日本の侵略的外来種

マダラコウラナメクジ（Limax maximus）は、ヨーロッパ原産の大型のナメクジです。日本では本来生息しておらず、外来種として定着しています。その体長は成体で10～20cmにも達し、灰褐色や淡褐色の体に黒い斑点が散らばる独特の模様が特徴です。

日本での分布と侵入経路

日本では2006年に茨城県で初めて確認されて以降、島根県、長野県、埼玉県などでもその姿が目撃されています。侵入経路は不明ですが、観葉植物などの輸入に伴って卵が持ち込まれた可能性が指摘されています。国立環境研究所のデータベースには、既に日本に定着した外来種として登録されています。

生態と繁殖

マダラコウラナメクジは雌雄同体で、自ら交尾によって繁殖します。茨城県土浦市では、若齢個体を含む多数の個体が確認されており、野外での繁殖が確認されています。しかしながら、その生態には不明な点も多く、さらなる研究が必要です。

農業被害と研究

マダラコウラナメクジは、栽培キノコなどの農作物を食害する農業害虫として問題視されています。そのため、その生態や分布状況の解明は喫緊の課題となっています。京都大学やNHKなどでは、マダラコウラナメクジの目撃情報を広く一般から募集する取り組みが行われています。これは、マダラコウラナメクジの分布状況を把握するだけでなく、過去に侵入した他の外来種ナメクジ（キイロナメクジ、チャコウラナメクジなど）の動向との比較を通して、外来生物の定着と拡大に関する研究を進めることを目的としています。また、市民科学の手法を用いた研究の一環でもあります。

外来種問題

マダラコウラナメクジの例は、外来種が日本の生態系に及ぼす影響の大きさを示しています。その生態を解明し、適切な対策を講じることで、在来種の保護と農業被害の軽減に繋げることが重要です。本種の研究は、外来種問題への理解を深め、効果的な対策を立てる上で重要な役割を担っています。

参考文献

Gelperin A. 1974. Olfactory Basis of Homing Behavior in the Giant Garden Slug, Limax maximus. Proc Natl Acad Sci U S A. 1974 March; 71(3): 966–970.
Wieland S. J. & Gelperin A. 1983. Dopamine elicits feeding motor program in Limax maximus. J Neurosci 1983, 3:1735-1745.

もう一度検索