マナブ間部

マナブ間部：ブラジルを舞台に生きた画家の軌跡

1924年、熊本県で宿屋の息子として生まれたマナブ間部は、10歳の時に家族と共にブラジルへ移民しました。コーヒー農園での過酷な労働を経験した後、1945年、農園の霜害を機に絵画の世界へ足を踏み入れます。当初は厚紙や板切れに絵を描くなど、周囲の環境を活かした表現方法で制作活動を始めました。

ブラジルでの成功と国際的な評価

1950年代に入ると、サンパウロ作家協会展やブラジルの国展に入選するなど、徐々に頭角を現し始めます。1953年には画風が転換期を迎え、静物や人物をテーマに、力強い線で構成された作品を発表しました。その後、独自の抽象表現を追求し、1959年には「レイネル賞展」でレイネル賞を受賞。同年、第5回サンパウロ・ビエンナーレ展で国内最高賞を受賞する快挙を達成します。さらに同月、第1回パリ青年ビエンナーレ展でも受賞し、アメリカのタイム誌で『MABE黄金の年』と称賛されるなど、世界的な知名度を獲得しました。これらの受賞が転機となり、彼の作品は広く知られるようになりました。

1960年には第30回ヴェネツィア・ビエンナーレでフィアット賞を受賞するなど、国際的な舞台で高い評価を得ていました。その後もローマ、パリ、ワシントン、ヴェネツィア、ミラノなど、世界各地で個展を開催し、1961年にはアルゼンチンで開催された南米ビエンナーレで絵画部1位入賞するなど、精力的に活動しました。彼の作品は、独特の色調と大胆な筆致で、ブラジルの情熱や自然を表現したものとして高く評価されていました。中には「ブラジルのピカソ」と呼ばれる作品もありました。

作品の損失と復活

1979年、日本での個展を終え帰国する際に、搭乗したヴァリグ・ブラジル航空機が遭難事故に遭い、携行していた作品の大半を失ってしまいます。この大きな損失を受けながらも、間部は14年もの歳月をかけて、失われた作品を1点1点描き直すという並々ならぬ努力を続けました。

晩年と遺産

1993年には日本経済新聞で「私の履歴書」を連載、1997年には東京で最後の個展を開催しました。同年、サンパウロ市内の病院で死去しました。彼の作品は現在、生地の熊本県宇城市にある不知火美術館に多く所蔵されています。息子のユーゴ・マベも画家として活動しており、間部の芸術的才能は次世代へと受け継がれています。

間部マナブは、ブラジルで成功を収めながらも、日本との繋がりを常に持ち続け、両国の文化を融合させた独自の芸術世界を築きました。彼の波乱に満ちた人生と、熱情のこもった作品群は、今も人々に感動を与え続けています。アンティーク収集家としての側面や、ボサノバを好んで聴いていたといった逸話も、彼の多様な一面を垣間見せてくれます。彼の生涯は、移民として異国の地で成功を収め、幾多の困難を乗り越えて芸術家として開花した、感動的な物語と言えるでしょう。彼の作品は、単なる絵画を超えた、彼の魂の表現と言えるのではないでしょうか。

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