マノン (オペラ)

マスネのオペラ『マノン』

ジュール・マスネ作曲のオペラ『マノン』は、アベ・プレヴォーの小説『マノン・レスコー』を原作とし、1884年にパリのオペラ＝コミック座で初演されました。この作品は、マスネのオペラの中でも特に成功を収めた一つであり、同劇場での上演回数は20世紀半ばまでに2000回を超えました。

同じ題材を扱ったオペラは他にも存在しますが、マスネの『マノン』は、その魅力的な音楽とドラマティックな展開で、今日でも多くの人々に愛されています。

作品の概要

『マノン』は、美貌と享楽を愛するマノン・レスコーと、純粋な騎士デ・グリューの悲恋を描いた物語です。運命に翻弄される二人の姿は、観る者の心を強く揺さぶります。

あらすじ

物語は、マノンが修道院へ送られる途中、アミアンの宿屋でデ・グリューと出会う場面から始まります。互いに惹かれ合った二人は、駆け落ちしてパリで愛し合う生活を始めますが、マノンの奢侈への欲求が、二人の運命を狂わせていきます。デ・グリューはマノンを満足させるために賭博に手を染め、やがて不正の疑いをかけられて逮捕されてしまいます。マノンも売春婦としてアメリカへ送られることになり、絶望したデ・グリューは、マノンを救うために奔走します。しかし、二人の再会は、マノンの死という悲劇的な結末を迎えます。

音楽的特徴

マスネの音楽は、甘美で官能的な旋律に満ちており、マノンの魅力とデ・グリューの情熱を鮮やかに描き出しています。特に、第2幕でデ・グリューが歌うアリア「夢の歌」や、マノンが歌う「さよなら、私たちの小さなテーブルよ」は、オペラ史に残る名曲として知られています。

形式と演出

『マノン』は、台詞を用いるオペラ・コミックの形式をとっていますが、台詞の場面でもオーケストラの伴奏が用いられるなど、メロドラマの要素も含まれています。バレエの場面も取り入れられていますが、演出によっては省略されることもあります。

主要登場人物

マノン・レスコー: 美貌と魅力を持つ女性。享楽的な性格で、奢侈への欲求が強い。
デ・グリュー: 純粋で真面目な騎士。マノンを深く愛し、彼女のために身を滅ぼしていく。
レスコー: マノンの従兄。好色で狡猾な人物。
ギヨー: 放蕩貴族。マノンに執着し、彼女を手に入れようとする。

『マノンの肖像』

マスネは後に、『マノン』の続編として1幕物のオペラ『マノンの肖像』を作曲しています。

『マノン』は、運命の女神（ファム・ファタール）を描いたオペラとして、今日でも世界中で愛されています。マノンの魅惑的な歌声と、デ・グリューの悲劇的な愛の物語は、観る者の心を捉えて離しません。

もう一度検索