ママレンジ

ママレンジ：昭和レトロな家庭用電気コンロ

1969年、アサヒ玩具から発売された「ママレンジ」は、高度経済成長期の日本において、家庭用システムキッチンが普及し始めた時代に登場した画期的な玩具です。当時としては珍しかった、家庭用電源を利用した電気コンロをコンパクトに再現したものでした。

直径約10cmのホットケーキや目玉焼きを焼けるこの玩具は、付属の小さなフライパンを使用します。価格は2,500円と、当時の玩具としては非常に高額でしたが、その魅力的な機能と、子どもたちの「ままごと」遊びを一段とリアルに彩る要素から、発売から1年間で17万個という驚異的な販売数を記録しました。この成功は、アサヒ玩具による「クッキングトイ・シリーズ」の展開へとつながる大きな一歩となりました。

しかし、ママレンジは電気コンロであるため、火傷の危険性も伴っていました。アサヒ玩具は、このリスクを軽減するため、最大1000万円という当時としては破格の保証制度を設けていました。製品自体は、フライパンを取り外すと自動で電源が切れる安全設計や、発熱部への直接接触を防ぐ構造になっていましたが、本体や余熱による火傷の危険性を完全に排除できたわけではありませんでした。

パッケージは27×22×18cm、重さは1.5kgと、それなりのサイズ感がありました。パッケージには人気女優の酒井和歌子さんの写真が使用され、本体はピンク色を基調とし、薔薇のイラストが描かれたものもあったようです。ちなみに、商品名が「ママキッチン」と誤解されることもあったようです。

ママレンジのヒットを受けて、アサヒ玩具は様々なクッキングトイを展開しました。代表的なシリーズ商品としては以下のものがあります。

ママ・ケーキ（オーブントースター）
ママ・スイート（綿菓子機）
ママ・ポッピー（ポップコーン機）
ママ・ナガシ（1975年発売）
ママ・クッキー（1975年発売）
ママ・シャワー
ママ・ディッシャー（食器洗浄機）
ママ・ウォッシャー（洗濯機）
ママ・マジックポット（ドリンクサーバー）
ママ・ポット
ママ・ポットジュニア
ママ・ジューサー
* ピンク・レディーのママ・ミラー

これらの商品群は、ママレンジと同様に、子どもたちの遊びの世界を豊かにし、家庭での「ままごと」遊びをよりリアルで充実したものにしてくれました。

ママレンジは、単なる玩具としてだけでなく、高度経済成長期における日本の社会状況や玩具産業の変遷を反映する製品として、現代においても注目に値します。1996年には、人気番組『探偵!ナイトスクープ』でジミー大西さんが探し求めたママレンジを使って、林裕人さんがホットケーキ、ピラフ、オムライス作りに挑戦する場面も放送され、改めてその存在が広く知られることとなりました。この番組での挑戦は、ママレンジの性能や当時の技術レベルを知る上で貴重な記録となっています。ママレンジは、単なる懐かしの玩具という枠を超え、日本の高度経済成長期の一面を垣間見ることができる、貴重な文化的遺産と言えるでしょう。

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