マリア1世 (ポルトガル女王)

マリア1世：激動の時代を生きたポルトガル女王

マリア1世（1734年 - 1816年）は、ポルトガル女王として、その治世はポルトガル海上帝国における重大な転換点となりました。彼女は「敬虔女王」とも呼ばれましたが、晩年は狂気に陥り、「狂女ドナ・マリア」とも呼ばれました。

治世

即位後、マリア1世はポンバル侯爵の独裁的な政治を是正する一方で、工業化を積極的に推進しました。道路や運河の開設、鉱山の検査、織物業の技術改良など、経済発展に貢献する政策を実施しました。1740年以降、ポルトガルはイギリスをはじめとする諸国との貿易で黒字を維持し、1789年には各国との通商条約を締結。ポルトガル産ワインやブラジル産砂糖の輸出を拡大し、繁栄を極めました。しかし、1789年のフランス革命勃発により、ポルトガルを取り巻く状況は一変します。

ナポレオン戦争

1793年、マリア1世はフランス革命軍と戦うスペイン軍を支援するため、カタルーニャに援軍を派遣しました。当初は優勢でしたが、後にスペインがフランスと和睦したため、ポルトガルは孤立します。1801年、ナポレオン・ボナパルトがスペインと同盟を結び、ポルトガル攻略を開始。スペイン軍がアレンテージョ地方を占領する事態となりました。ポルトガルはフランスとの講和を模索しましたが、オリヴェンサの譲渡、ブラジル北部割譲、多額の賠償金支払い、イギリス船に対する港の封鎖など、受け入れがたい条件が提示されました。

ブラジルへの宮廷移転

1806年、ナポレオンが大陸封鎖令を発令しますが、ポルトガルはこれに従いませんでした。ナポレオンはスペインと密約を交わし、ポルトガルを分割することを決定。1807年11月、ジュノー将軍率いるフランス軍がポルトガルに侵攻します。摂政ジョアンはイギリスと秘密裏に交渉し、王室はイギリス艦隊に護衛され、ブラジルへと脱出しました。この際、多数の貴族や裕福な商人など、約1万人が王室とともにブラジルへ渡りました。

晩年と死

1816年、マリア1世はリオ・デ・ジャネイロで崩御し、サン・フランシスコ・デ・パウラ教会に埋葬されました。後に棺はポルトガルへ移送され、彼女が建設を命じたエストレラ大聖堂に埋葬されています。

人物

1760年、マリア1世は父の弟であるペドロと結婚しました。即位後7年の間に、母、夫、長男を相次いで亡くすという不幸に見舞われました。晩年は精神を病み、1792年以降は四男のジョアン王子が摂政を務めました。精神疾患の治療にはイギリス国王ジョージ3世の医師があたりましたが、回復することはありませんでした。

子供

ジョゼ (1761年 - 1788年)
ジョアン (1762年)
ジョアン・フランシスコ (1763年)
ジョアン・マリア (1767年 - 1826年)
マリア・アナ・ヴィトリア (1768年 - 1788年)
マリア・クレメンティナ (1774年 - 1776年)
* マリア・イサベル (1776年 - 1777年)

マリア1世の治世は、ポルトガルにとって激動の時代であり、彼女の決断はポルトガルの歴史を大きく左右しました。

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