マリンピアくろい

マリンピアくろいの歴史と現在

マリンピアくろいは、かつて山口県豊浦郡豊浦町に存在したレジャー施設で、その独自の運営形態が特筆されます。1977年に黒井漁業協同組合とその組合員の共同出資で設立された「株式会社黒井漁協自然海浜センター」がこの施設の運営母体です。海に面した場所に位置するこのレジャーエリアには、宿泊施設やスポーツ施設、飲食店、遊園地などが備わっており、リゾート型の総合レジャー施設として開業しました。

特に漁協を母体としたレジャー施設は非常に珍しい存在で、その開業に際して県信漁連から約33億円、黒井漁協から約41億円の融資を受けるなど、大規模な投資が行われました。開業初期の1980年代には、大相撲の地方巡業やジャズ・フェスティバルといった多彩なイベントが開催され、特に夏場には多くの観光客を集めていました。

また、1996年には将棋界の天才・羽生善治が第45期王将戦の七番勝負第4局で史上初の七冠を達成した場でもあり、その出来事はマリンピアくろいにとっての歴史的な瞬間となりました。しかし、開業から持続的な赤字経営が続き、1980年代末以降は入場者数の減少が影響して、次第に施設の採算が悪化しました。1997年には閉鎖に至りました。

羽生の七冠達成時に使用された将棋盤や駒は、社長室内に保管されていたものの、閉鎖時に何者かによって持ち去られ、現在は行方不明となっています。

その後、2003年にはパチンコチェーンの大手、ダイナムが施設の大部分を購入し、現在は『マリンピア豊浦』として運営されています。この施設内には、羽生の七冠を記念する碑が設置されており、対局が行われた部屋も「王将の間」として残され、当時の名残を感じさせています。一方、海沿いの釣り堀やレストランはダイナムに売却されず、そのまま営業が続けられています。2023年の現状においても、釣り堀やレストランは地域の人々に親しまれています。

ダイナムは2015年にリゾート事業への参入を表明し、この施設をリゾートとして再オープンする計画を打ち出しました。2016年9月にはその準備を行うため、「下関リゾート開発」という会社を設立しましたが、残念ながら2020年8月に同社は清算されました。

このようにマリンピアくろいには、栄光の時代と過酷な経営環境という両面があり、その歴史は今も地域の人々にとって語り草となっています。かつての賑わいを誇った場所が、新たな形で地域活性化に役立っていることは、その証左と言えるでしょう。

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