マリーナ・ツヴェターエワ

マリーナ・イヴァーノヴナ・ツヴェターエワの生涯と業績

マリーナ・イヴァーノヴナ・ツヴェターエワ（1892年10月8日 - 1941年8月31日）は、ロシアの著名な詩人であり、特にその叙情表現と情熱的な恋愛詩で名を馳せました。モスクワに生まれた彼女は、早くから詩の世界に身を投じ、10代でデビューを果たしました。ツヴェターエワは個性的なスタイルと深い感受性を持ち合わせ、彼女の作品は今もなお多くの人々に愛されています。

幼少期と教育

ツヴェターエワの父は、モスクワ大学の教授であり、アレクサンドル3世美術館の創設者の一人でした。母のマリアはポーランドの血を引く高潔な教養人で、彼女自身もピアノの才能を持っていました。1902年、母が結核を患い、家族はイタリアをはじめとする各地を転々とすることになります。この時期、彼女はナポレオンやその他のロマン主義的英雄に強い魅力を感じるようになり、文学への関心を高めていきました。

1904年には、ローザンヌの学校に入学し、すぐにイタリア語、フランス語、ドイツ語をマスターしました。そして1908年にはソルボンヌ大学で文学史を学び、デビューから数年後には、18歳の若さで自費出版した詩集『夕べのアルバム』が高い評価を受け、彼女は詩壇に名を刻みました。

恋愛と結婚

ツヴェターエワは1912年にセルゲイ・エフロンと結婚し、二女をもうけますが、その後様々な恋愛模様も展開します。彼女は男女を問わぬ恋愛を経験し、特に有名な詩人であるボリス・パステルナークとの交流が知られています。彼女の詩作は、個人的な経験と感情に深く根ざしたものであり、彼女の作品をより印象的にしています。

ロシア革命と亡命

ロシア革命が勃発すると、エフロンは白軍に参加し、ツヴェターエワはモスクワに留まります。しかし、革命による混乱の中、愛する娘を失い、彼女は悲痛な思いを抱えます。1922年には亡命を決意し、長女アリアドナと共にドイツのベルリンへと逃れました。パリやチェコを転々としながら、亡命ロシア人社会で創作を続ける中で、最初は歓迎されるものの、次第に孤立感を深めることになります。

帰国と悲劇的な結末

1939年、ツヴェターエワは夫であるエフロンがソ連に戻ったのを追いかけ、息子と共に帰国します。しかし、その後、エフロンと娘は逮捕され、ツヴェターエワは窮地に立たされます。疎開先のタタール自治共和国で自ら命を絶った彼女は、その地に埋葬されました。一方、夫は処刑され、息子も戦争で命を落とします。

復権と現代の評価

ソ連崩壊の後、娘アリアドナの努力によりツヴェターエワの作品が再評価され、1960年代にはその名声が復権します。現在では、彼女はロシアを代表する詩人の一人として、多くの人々に親しまれています。また、彼女の作品は音楽にも影響を与え、ショスタコーヴィチによる歌曲などでも取り上げられています。

代表作

ツヴェターエワにとって、詩は彼女の心の内を表現するものであり、彼女の代表作には『手職』『ロシア以後』などがあります。また、長詩『うるわしの乙女』や、名作『私がうれしいのは』において、彼女の独特な視点と感受性が表れています。今日、日本を含む世界中で彼女の詩が愛され続けていることは、彼女の言葉が持つ普遍的な魅力の証と言えるでしょう。

マリーナ・ツヴェターエワの人生は、彼女の作品と同様に、愛と喪失、再生をテーマにした深いものです。彼女の詩は、時代を超えて多くの人々の心に響き続けることでしょう。

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