マリー・カロリーヌ・ド・ブルボン＝シシレ (1822-1869)

マリー＝カロリーヌ＝オーギュスト・ド・ブルボン＝シシレ：激動の時代を生きた王女の生涯

マリー＝カロリーヌ＝オーギュスト・ド・ブルボン＝シシレ（1822年4月26日 - 1869年12月6日）は、両シチリア王国の王女として生を受け、フランス王ルイ・フィリップの息子、オマール公アンリと結婚しました。彼女は、激動の時代を生き抜き、フランス王室の一員として、また妻、母として、その生涯を全うしました。

生い立ちと結婚

マリー＝カロリーヌは、両シチリア王フェルディナンド1世の末子であるサレルノ公レオポルドと、オーストリア大公女マリア・クレメンティーネの間に生まれました。家族からは「リーナ」という愛称で親しまれました。両親はウィーン宮廷を頼り、彼女自身もウィーンで育ちました。

結婚適齢期を迎えたリーナには、多くの縁談が舞い込みました。その中で彼女が選んだのは、父方叔母の夫であるフランス王ルイ・フィリップの五男、オマール公アンリでした。同い年の従兄であるオマール公は、パラッツォ・サレルノでリーナを見初めたとされています。1844年11月25日、ナポリ王宮で盛大な結婚式が執り行われ、リーナは莫大な持参金とともにフランス王室の一員となりました。

パリ宮廷での生活

パリ宮廷入りしたリーナは、舞踏会や観劇など、王族としての公務に忙殺される日々を送りました。1845年5月には、新居であるシャンティイ城に移り住み、オマール公との夫婦生活をスタートさせました。彼女は貞淑で愛情深い妻としてオマール公を支え、夫婦は生涯にわたり互いを尊重し合いました。

同時代の人々は、リーナのことを愛想が良く、ウィットに富んだ人物だったと証言しています。彼女は寛容で親切な人柄で、義理の家族であるオルレアン家の人々からも愛されました。1845年8月には、ヴィクトリア英国女王夫妻がフランスを訪問した際、リーナと対面しています。女王はリーナのことを「愉快な人」と評し、その人柄に好印象を抱いたようです。

英国への亡命と晩年

1848年の2月革命により王政が打倒されると、オルレアン家一族はイングランドへ亡命を余儀なくされました。リーナは、生活を維持するために宝石を売却するなど、苦しい生活を送りましたが、ヴィクトリア女王の友情に支えられ、トゥイッケナムのオーリンズ・ハウスを住居として提供されました。

リーナは英国滞在中、ウスターシャーのウッド・ノートン・ホールを好み、またヨーロッパ各地を旅行しました。しかし、1866年5月には長男コンデ公ルイが急死するという悲劇に見舞われました。この出来事は、リーナにとって大きな精神的痛手となりました。

1869年12月6日、リーナは肺塞栓により47歳という若さで亡くなりました。ヴィクトリア女王は、親しい友の死を深く悼みました。彼女の遺骸は、ウェイブリッジのカトリック礼拝堂に埋葬されましたが、後にドルーのサン＝ルイ王室礼拝堂に改葬されました。

子女

リーナは、オマール公との間に8人の子供をもうけましたが、その多くは早世しました。成人したのは、長男のコンデ公ルイと、五男のギーズ公フランソワ・ルイ・フィリップ・マリーの2人でしたが、彼らも若くして亡くなっています。子供たちの夭折は、両親の近親婚が原因だったと考えられています。

マリー＝カロリーヌ＝オーギュスト・ド・ブルボン＝シシレは、激動の時代を生き、フランス王室の一員として、また妻、母として、その生涯を全うしました。彼女の生涯は、激動の時代における王族の在り方、そして家族愛の尊さを教えてくれます。

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