マリー・ダグー

マリー・カトリーヌ・ソフィー・ド・フラヴィニー、通称マリー・ダグー伯爵夫人は、1805年12月31日にフランクフルト・アム・マインで生まれ、1876年3月5日にパリで亡くなったフランスの貴族女性であり、作家、ジャーナリストです。彼女は、ダニエル・ステルンというペンネームでも知られ、フランツ・リストの愛人であり、リヒャルト・ワーグナーの妻となったコジマ・リストの母親としても有名です。

生い立ちと結婚

マリーは、亡命フランス貴族のA.V.F.ド・フラヴィニー子爵の娘として生まれました。フランスで教育を受け、10歳の時にフランクフルトのサクレ・クール修道院に入りました。16歳で修道院を出た後、1827年にダグー伯爵シャルル・ルイ・コンスタントと結婚しました。伯爵との間にはルイーズとクレールという二人の娘をもうけましたが、1835年に離婚しました。

フランツ・リストとの関係

1835年から1839年まで、マリーはフランツ・リストとジュネーブやイタリアで同棲しました。この関係で、ブランディーヌ、コジマ、ダニエルという三人の子供をもうけました。当時の貴族階級の慣習に従い、子供たちは生まれるとすぐに乳母に預けられました。この期間、マリーはリストの音楽活動を支え、共に過ごした日々は、彼女の回想記にも記されています。

文筆活動

マリーは、作家ダニエル・ステルンとして多くの作品を発表しました。初期の小説には、『エルヴェ』、『ジュリアン』、『ヴァレンティア』、『ネリダ』などがあります。彼女の最も有名な作品は、1848年のフランス革命を詳細に記録したルポルタージュ作品『1848年革命史』です。この作品は、革命の目撃者としての彼女の視点と、鋭い社会分析が評価されています。その他、『道徳的スケッチ』、『マリー・スチュアートの生涯の三日間』、『フィレンツェとトリノ』、『ネーデルラント共和国草創史』など、幅広いテーマで執筆活動を行いました。また、彼女の回想録『わが回想』は、自身の人生と時代の証言として貴重な資料となっています。

影響と評価

マリー・ダグーは、単なる貴族女性やリストの愛人としてだけでなく、自立した作家、ジャーナリストとしても評価されるべき存在です。彼女の著作は、19世紀フランスの政治、社会、文化を多角的に捉えており、当時の人々の生活や思想を理解する上で重要な資料となっています。また、彼女の視点は、女性の社会進出が困難であった時代において、先駆的な存在であったと言えるでしょう。

彼女の生涯は、ドミニック・デザンティによる伝記『新しい女―19世紀パリ文化界の女王 マリー・ダグー伯爵夫人』や、坂本千代の『マリー・ダグー　19世紀フランス伯爵夫人の孤独と熱情』など、多くの研究者によって研究されています。また、近藤朱蔵訳の『巡礼の年　リストと旅した伯爵夫人の日記』は、彼女とリストの旅の記録であり、二人の関係を垣間見ることができます。

もう一度検索