マリー＝ルイーズ・オミュルフィ

マリー＝ルイーズ・オミュルフィ（Marie-Louise O'Murphy, 1737年10月21日？ - 1814年12月11日）は、18世紀のフランスにおいて、ブルボン朝の王ルイ15世の数多くの愛人の一人として歴史に名を残す女性です。

生い立ちと転機

オミュルフィは、フランス北西部の都市ルーアンで、アイルランド系の血を引く兵士の娘として生まれたと伝えられています。幼い頃に父を亡くし、母親に連れられて家族と共にパリへと移住しました。貧困の中で、彼女は画家たちのモデルとして働くようになります。その美貌は当時から際立っており、特に裸体像のモデルを務めることが多かったようです。

1752年、彼女の人生は大きく動きます。当時の著名な画家であったフランソワ・ブーシェが彼女をモデルに描いた裸体画が大きな評判を呼んだのです。この絵によって、オミュルフィの名は美術界を超えて知られるようになり、その存在は王宮の関係者の耳にも入るところとなりました。

王との関係「鹿の園」

ブーシェの絵がきっかけとなり、オミュルフィは当時のルイ15世の公妾であり、絶大な影響力を持っていたポンパドゥール夫人が関わっていたとされる「鹿の園（Parc-aux-Cerfs）」と呼ばれる場所に招かれます。この「鹿の園」は、王が若い女性たちとの関係を持つために設けられたとされる場所であり、そこに入った女性たちは王の短期間の愛妾となることが通例でした。

オミュルフィはそこでルイ15世の愛妾となり、王の寵愛を受けることになります。しかし、「鹿の園」における愛妾たちの関係は原則として長くは続かず、比較的に短期間で新たな女性と入れ替わるシステムであったため、オミュルフィの王との関係も例外ではありませんでした。

王との間の子供たちとその後

ルイ15世との間に、オミュルフィは二人の子供をもうけたとされています。一人は夭逝した女の子ですが、もう一人は男の子でした。この息子は後に軍人として頭角を現し、ベリュイゥイ将軍と名乗るまでになったと言われています。母であるオミュルフィが王の愛妾であったという出自が、息子のキャリアに影響を与えた可能性は否定できません。

王との愛妾関係が短期間で終わった後、オミュルフィは「鹿の園」を出ることになりました。彼女は王室からの年金支給を受けて生活を保障され、また、良縁を得て結婚しました。愛妾としての特別な地位からは退いたものの、その後の人生は比較的安定していたようです。

晩年とフランス革命

しかし、彼女の人生は平穏だけで終わるわけではありませんでした。フランス革命という未曽有の社会変動が起こると、かつて王室と関係を持っていた人々は危険な立場に置かれました。オミュルフィもまたその例外ではなく、革命期間中には逮捕され、投獄されるという辛い経験をしたと伝えられています。

激動の時代を生き抜いたマリー＝ルイーズ・オミュルフィは、1814年にその波乱に富んだ生涯を閉じました。画家ブーシェの絵画に描かれた美貌と、ルイ15世の愛妾という立場から、一時期は宮廷に近い場所に身を置きましたが、最終的にはフランス革命という歴史の大波に翻弄された一人の女性として、その人生の幕を下ろしたのです。

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