マリ軍事クーデター (2012年)

2012年マリ軍事クーデター

2012年3月21日、マリ共和国の首都バマコで発生した軍事クーデターについて解説します。

背景

マリ共和国は1960年の独立以来、遊牧民であるトゥアレグ族による反政府闘争が続いていました。2011年のリビア内戦にトゥアレグ族が参加したことで、戦闘経験を積み、高性能な武器を持ち帰ったことで軍事力を強化しました。アザワド解放民族運動 (MNLA)のもと組織化されたトゥアレグ族は、2012年1月中旬より独立を求め蜂起し、政府軍との紛争が勃発しました。

しかし、政府軍内部からは武器や資材の不足に対する不満が高まりました。また、多くの兵士が死亡、もしくはトゥアレグ族勢力に拘束されていると思われたことから、政府の対応に対する不満が鬱積していました。

経過

2012年、新たに国防大臣に就任したサディオ・ガサマが、不満を募らせている兵士のために3月21日、バマコ郊外の軍事キャンプを訪問しました。兵士たちは弾薬などの武器の充実を求めましたが、ガサマは明確な返事をしませんでした。これに対し、兵士たちは空砲を撃つなど抗議を開始し、バマコに向けて進撃を始め、午後4時半には国営放送局を占拠、大統領府も攻撃し、警備隊との間で銃撃戦となりました。

スメイル・ブベイエ・マイガ外務大臣や内務大臣など複数の閣僚が拘束され、アマドゥ・トゥマニ・トゥーレ大統領は銃撃戦開始後に大統領府を脱出したと報じられましたが、消息は不明でした。3月23日、アフリカ連合のジャン・ピン委員会委員長は、トゥーレ大統領が無事であることを発表しました。一連の騒乱で38人が負傷し、病院へ搬送されました。

3月22日早朝、反政府勢力は自らを民主主義制定のための全国委員会 (CNRDR)と名乗り、国営テレビを通じて権力掌握、憲法の停止、国家機関の解体を宣言しました。クーデターの理由として、トゥーレ政権が「無能な政府」であり、責任を取るために終わらせること、武器不足を挙げました。また、国内が再び統一され、領土が保全され次第、民政に移管することも表明しました。マリ国内には外出禁止令が出され、バマコでは反乱兵士による暴行や略奪行為が相次ぎました。

国営放送では、クーデターを指導するアマドゥ・サノゴ大尉がトゥーレ大統領に代わって権力を掌握したと宣言しました。

この混乱に乗じてMNLAは北部攻勢をさらに進め、4月6日に北部をアザワドとする独立を宣言しました。反乱軍は[西アフリカ諸国経済共同体]と制裁解除を条件に、実権をディオンクンダ・トラオレ国会議長に移譲することで合意しました。政権を追われたトゥーレ大統領は4月8日に正式に辞任し、トラオレが4月12日に暫定大統領に就任。クーデター発生から22日後、マリ共和国は民政に復帰しました。

国外の反応

国際連合：潘基文事務総長はクーデターを非難し、司法の回復を求めました。
アフリカ連合：反乱軍を非難し、3月23日にはマリ共和国の加盟資格を停止しました。
西アフリカ諸国経済共同体：反乱軍を非難しました。
アメリカ合衆国：ジェイ・カーニーホワイトハウス報道官は、反乱軍による政権転覆を強く非難し、トゥーレ政権支持を表明、憲法による統治に戻るよう求めました。
中国：洪磊外務省報道官は事態を注視し、早期の収拾を希望すると表明しました。
南アフリカ共和国：反乱軍を非難しました。

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