マルセル・シャンピ

マルセル・シャンピ

マルセル・ポール・マクシミン・シャンピ（Marcel Paul Maximin Ciampi）は、1891年5月29日にフランスに生まれ、1980年9月2日にパリでその生涯を閉じた、20世紀前半から中期にかけて活躍したフランスの代表的なピアニスト、そして教育者です。

彼は、音楽家を多数輩出したパリの家庭に生まれました。両親と妹は声楽家として活動しており、特に母方の叔父にあたるテオドール・リッターは、楽聖フランツ・リストに師事した高名なピアニストでした。このような音楽に囲まれた環境は、シャンピのその後のキャリアに大きな影響を与えました。

ごく幼い頃から、シャンピは音楽の道を歩み始めました。最初のピアノの手ほどきは、叔父であるテオドール・リッターの門下生より受けたとされています。その後、彼は名教師ジョルジュ・マティアスに師事するなど、着実に研鑽を積みました。1904年にはジョルジュ・ファルケンベルクの指導を受け、翌1905年には名門パリ音楽院に入学。ここでは、高名なピアニストで教育者でもあったルイ・ディエメのクラスで学びました。さらに、アントン・ルビンシテインの愛弟子であったマリー・ペレス・ドゥ・ブランビラからも貴重な薫陶を受けています。多角的な指導のもと才能を磨いたシャンピは、1909年に難関とされるプルミエ・プリ（一等賞）を獲得し、パリ音楽院を優秀な成績で卒業しました。

音楽院卒業後、シャンピはすぐにピアニストとしてプロのキャリアをスタートさせました。彼はソロ活動に加え、室内楽や伴奏においても優れた才能を発揮します。特に、ヴァイオリニストのジョルジュ・エネスコやジャック・ティボー、チェリストのパブロ・カザルス、あるいは同じくピアニストのジェラール・エッキャンといった、同時代の国際的に名だたる演奏家たちと積極的に共演を重ねました。これらの共演を通じて、彼の演奏家としての声望は一層高まり、ヨーロッパ各地でその名を知られるようになりました。

私生活では、1920年にヴァイオリニストのイヴォンヌ・アストリュクと結婚しています。

演奏活動と並行して、シャンピは教育者としても多大な功績を残しました。1941年には母校であるパリ音楽院の教授に迎え入れられ、後進の指導に情熱を注ぎました。この職務は20年間にわたり続けられ、1961年に退任しました。パリ音楽院を離れた後も、彼の教育への意欲は衰えることなく、1963年からはイギリスに設立されたユーディ・メニューイン音楽学校でも教鞭を執り、若き才能の育成に貢献しました。

彼の薫陶を受けた門下生の中には、ヘプシバ・メニューイン、イヴォンヌ・ロリオ、セシル・ウーセ、ジャン＝マルク・ルイサダといった、後に国際的な舞台で活躍する錚々たるピアニストたちがいます。これらの弟子たちの活躍は、シャンピがいかに優れた指導者であったかを物語っています。

マルセル・シャンピは、演奏家として、また教育者として、フランスの音楽界に大きな足跡を残しました。彼は1980年、89歳で故郷パリにてその波乱に富んだ生涯を静かに終えました。彼の築き上げた教育の系譜は、今なお世界中のピアニストたちに受け継がれています。

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