マルセル・ロッズ

マルセル・ロッズ：フランス近代建築の巨匠

マルセル・ガブリエル・ロッズ (1891年8月16日-1978年9月9日) は、20世紀フランスを代表する建築家、都市計画家です。パリに生まれ、国立高等装飾美術学校を経て、1923年にエコール・デ・ボザールを卒業。建築家としてのキャリアをスタートさせました。

軍隊での経験と航空への情熱

第一次世界大戦と第二次世界大戦の間にフランス空軍に所属した経験は、彼の建築思想に大きな影響を与えました。航空学への深い関心は、後の作品にも見られ、特に軽量な素材の使用や、航空写真による建築記録へのこだわりなどに表れています。

ウジェーヌ・ボードゥアンとの協働とプレハブ工法

建築家ウジェーヌ・ボードゥアンとの長年にわたる協働は、ロッズの建築活動において重要な位置を占めます。彼ら二人は、特に建物建設におけるプレハブ工法の開発に尽力しました。1930年代には、シャンデゾワゾーのバニューやドランシーのシテ・デ・ラ・ドゥラミュエットといった、画期的なプレハブ集合住宅を設計・建設。これらのプロジェクトは、フランスにおける近代建築、特に集合住宅建築の大きな転換点となりました。

現代芸術家連合(UAM)と革新的な建築デザイン

30代で現代芸術家連合(UAM)のメンバーとなり、ロッズは可動式外壁を備えたシュレンヌの野外教育施設など、斬新なデザインの建築物を次々と発表。軽量素材の活用や、建物の機能性とデザインの調和を重視した建築は、当時の建築界に大きな衝撃を与えました。クリシーのメゾン・デュ・プープルは、エンジニアのウラジミール・ボディアンスキー、ジャン・プルーヴェとの協働により実現した代表的な作品です。彼は、非物質性を志向する建築という理想を追求し、ローランギャロス空港のクラブハウスなどにその理想を具現化しました。

戦後の復興と国際的な活躍

第二次世界大戦後、ロッズはル・コルビュジエらとともに建築リノベーション協会(ASCORAL)の活動に参加。さらに、ドイツの都市再建計画にも携わり、戦災で壊滅的な被害を受けたマインツの都市計画などに尽力しました。しかし、彼の革新的なアイデアは必ずしも受け入れられたわけではなく、1948年にパリに戻り、独立して建築家としての活動を続けます。

教育者としての貢献と建築写真のアーカイブ

1950年代初頭からは、国立美術学校の建築ワークショップの責任者を務め、ジャン・ルノディー、レニー・ゲイルステットら多くの建築家を育成。航空写真による建築記録にも情熱を注ぎ、膨大な数の航空写真を撮影しました。これらの写真は、現在、フランス建築研究所に保管され、貴重な建築史料として活用されています。

主要な建築作品

ロッズの建築作品は多岐に渡り、集合住宅、公共施設、個人の住宅など、様々な建築物が存在します。主な作品として、以下が挙げられます。

クリシー人民の家 (1931-1934): ウジェーヌ・ボードゥアン、ウラジミール・ボディアンスキー、ジャン・プルーヴェらとの協働による、プレハブ工法を駆使した集合住宅。
シテ・デュ・シャンデゾワゾーバニュー (1931-1935): フランス初のプレハブ住宅団地。
シュレンヌの野外教育施設 (1934): 可動式外壁を備えた革新的なデザイン。
ローランギャロス空港施設 (1935): 非物質性を追求した建築思想が表現された作品。
ソットヴィル＝レ＝ルーアンの都市再建 (1948-1955): 戦後の都市復興計画における重要なプロジェクト。
フォントネスーボアZUPデラプレーヌ (1958-1966): 大規模な集合住宅プロジェクト。
* パリ人間科学の家 (1970): 晩年の代表作の一つ。

まとめ

マルセル・ロッズは、プレハブ工法の導入、軽量素材の活用、そして非物質性を志向した建築など、近代建築に多大な貢献をした建築家です。彼の建築作品は、フランス近代建築史において重要な位置を占め、現代建築にも多大な影響を与えています。彼の生涯と作品は、未来の建築家にとって貴重な学びとなるでしょう。

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