マルダーIII

マルダーIII：対戦車自走砲の詳細解説

マルダーIIIは、第二次世界大戦中にドイツが開発した対戦車自走砲であり、38(t)戦車の車台を基に開発されました。この自走砲は、ドイツ軍が直面した対戦車能力の不足を補うために、既存の戦車を改造または転用する形で誕生しました。マルダーとはドイツ語で「テン」を意味します。

開発の背景

独ソ戦（バルバロッサ作戦）の初期、ドイツ国防軍は、ソ連軍のT-34やKV-1といった強力な戦車に対抗する必要に迫られました。そのため、既存の戦車を改造するか、その生産ラインを利用して対戦車自走砲を開発する方針が採用されました。その結果、旧式化していた38(t)戦車の車台を利用したマルダーIIIが開発されました。

各派生型

マルダーIIIには、主に以下の3つの派生型が存在します。

Sd.Kfz.139 マルダーIII

初期型であるSd.Kfz.139は、38(t)戦車の車台に、鹵獲したソ連製の7.62cm F-22野砲を改造した7.62 cm PaK 36(r)を搭載しました。この砲は、ドイツ軍の7.5cm弾薬を使用できるように改良されました。このタイプの装甲は、前面50mm、側面11mmと薄く、乗員を十分に保護することはできませんでしたが、高い火力を有していました。1942年2月に試作車が完成し、同年4月から11月にかけて176輌、その後も製造が続けられました。

Sd.Kfz.138 マルダーIII Ausf. H

H型は、38(t)戦車H型の車体に、標準的な7.5cm PaK 40/3対戦車砲を搭載したモデルです。エンジンが後部に搭載されているため、戦闘室は車体中央に配置され、エンジングリル上には乗員用の足場が追加されました。このタイプは、1942年から1943年にかけて418輌が製造されました。

Sd.Kfz.138 マルダーIII Ausf. M

M型は、自走砲専用の車台を使用し、戦闘室を後部に移動させたモデルです。このタイプも7.5cm PaK 40/3対戦車砲を搭載しており、生産性を向上させるために設計されました。エンジンは、初期には150馬力のプラガACが使用されましたが、後期には160馬力のプラガNSに変更されました。M型は、1943年5月から1944年6月にかけて、マルダーIII系列の中で最も多い942輌が製造されました。また、弾薬輸送車も試作されました。

戦歴

マルダーIIIは、東部戦線を中心に、北アフリカ、イタリア、西部戦線など、あらゆる戦場で使用されました。国防軍や武装親衛隊、空軍など、様々な部隊に配備されました。38(t)戦車の機構を利用しているため、機械的な信頼性は高かったものの、装甲が薄く、オープントップ形式であったため、敵の攻撃に対して脆弱でした。しかし、搭載された7.5cm PaK40/3対戦車砲は強力であり、適切な条件下では連合軍の戦車に対抗することができました。

マルダーIIIは、戦車や突撃砲ではなく、機動対戦車砲としての性格が強く、陣地転換の迅速性を活かした受動的な戦闘に用いられました。後に登場した軽駆逐戦車ヘッツァーに生産が引き継がれましたが、既存の車両は終戦まで使用されました。

マルダーIIIの弱点

マルダーIIIの最大の弱点は、生存性の低さでした。車高が高く発見されやすいことに加え、装甲が薄いため敵の攻撃に対して脆弱でした。また、オープントップ形式であったため、乗員の保護も不十分でした。対戦車砲と同様に、砲爆撃や歩兵の攻撃にも弱く、正面からの投入は困難でした。

まとめ

マルダーIIIは、第二次世界大戦中にドイツ軍が開発した対戦車自走砲であり、38(t)戦車の車台を基に複数の派生型が製造されました。その高い火力と機動性により、連合軍戦車に対抗する上で重要な役割を果たしましたが、装甲の薄さやオープントップ構造から生存性の低さが課題として残りました。しかし、戦場での迅速な展開能力を活かし、終戦まで使用され続けました。

登場作品

（省略）

関連項目

マルダーI
マルダーII
駆逐戦車
自走砲

外部リンク

AFV Interiors (英語)
LemaireSoft (英語)
OnWar ( Marder III M ) (英語)
WWII Vehicles (英語)

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