マルバシモツケ

マルバシモツケ（丸葉下野、学名：Spiraea betulifolia）は、バラ科シモツケ属に分類される落葉性の低木です。

特徴

本種は、おおよそ50cmから1メートル程度の高さに生長します。株元からよく枝分かれし、全体としてこんもりと丸みを帯びた樹形を形成するのが特徴です。若い頃の枝は赤褐色をしており、表面には毛が見られないか、あるいは柔らかな白い毛が生えている場合があります。

葉は枝に互い違いに並び（互生）、1mmから3mmほどの短い葉柄を持っています。葉の形は変化に富み、多くは倒卵形、つまり卵を逆さまにしたような形をしていますが、広倒卵形や、より丸みに近い卵円形になることもあります。葉の先端は丸いか、わずかに鈍く尖らない形（円頭または鈍頭）で、基部は丸みを帯びるか、葉柄に向かって広いくさび形になり、そのまま葉柄に流れるような形をしています。葉身の大きさは長さ1.5cmから6cm、幅は1cmから4cm程度です。葉の表面、裏面ともに毛はほとんどなく滑らかで、縁には特徴的な二重のギザギザ（重鋸歯）が明確に見られます。葉の裏面は表よりやや淡い緑色をしています。この名の通り丸みを帯びた葉の形が、「マルバ（丸葉）」という名前の由来となっています。

開花時期は夏、おおよそ6月から8月にかけてです。枝の先端に、多数の花が集まった円錐状の花序（複散房花序）を作ります。花は小さく、直径は5mmから8mmほどで、色は純白の5弁花です。花弁自体の長さは約1.5mmと控えめですが、その中心部から放射状に突き出す多数の雄蕊（おしべ）が非常に長く、7mmから10mmにもなります。この長い雄蕊が、小さな白い花全体にふわりとした柔らかな印象を与えています。

分布と生育環境

マルバシモツケは、日本では北海道と本州の中部から北部にかけての地域に分布しています。主に、亜高山帯から高山帯という比較的標高の高い場所に生育しています。特に、日当たりの良い岩場や石がゴロゴロしているような場所（岩礫地）を好んで自生しており、厳しい自然環境にも耐える力を持っています。

日本国外では、東シベリア、樺太（サハリン）、千島列島など、北方域にも広く分布が確認されています。

下位分類

日本国内には、マルバシモツケの変種や品種がいくつか知られています。

アポイシモツケ（Spiraea betulifolia Pall. var. betulifolia f. grandifolia (Nakai) Kitam. ex Kawano）
テシオシモツケ（Spiraea betulifolia Pall. var. betulifolia f. oblanceolata (Tatew.) Kitam.）
エゾノマルバシモツケ（Spiraea betulifolia Pall. var. aemiliana (C.K.Schneid.) Koidz.）
ケナシエゾノマルバシモツケ（Spiraea betulifolia Pall. var. aemiliana (C.K.Schneid.) Koidz. f. glabra (H.Hara) Ohwi）
マシケマルバシモツケ（Spiraea betulifolia Pall. var. yoshitakae* Toyok.）

これらの下位分類は、葉の形や毛の有無など、わずかな形態的な違いによって区別されます。

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