マーズマトリックス

『マーズマトリックス』(MARS MATRIX)は、日本のゲーム開発会社タクミコーポレーションが開発を手掛け、カプコンから2000年にアーケード向けにリリースされた縦スクロールタイプのシューティングゲームです。同年11月には、家庭用ゲーム機であるドリームキャストへの移植版も発売されました。

独特の操作システムとゲーム性

本作は、その時期の弾幕系シューティングゲームとしては珍しく、操作に用いるボタンはたった一つという大胆な設計を採用しています。この単一のボタン操作で、通常ショット、貫通性能を持つピアシングキャノン、敵弾を操るモスキート、そして緊急回避にも使えるボンバー「G.H.B.」の計四種類の攻撃を使い分ける必要があり、これがプレイヤーに独特の習熟を要求する要素となっています。このシステムは「1トリガーF.C.S.」と名付けられています。

各武装はボタンの押し方や長さによって切り替わります。

通常ショット: ボタンを連続で入力することで発射される基本的な攻撃です。後述する経験値によって威力を強化できます。
ピアシングキャノン: ボタンを一度離してから短く押すことで放たれる攻撃です。高い攻撃力を持ち、敵や障害物を貫通しますが、射程は比較的短いという特性があります。
モスキート: 『ギガウイング』のリフレクトフォースに類似した、攻防一体のシステムです。ボタンを押し続けることで自機の周囲にバリアを展開し、敵弾を一時的に引き寄せます。引き寄せられた敵弾は攻撃判定を持つようになり、自機の動きにある程度追従します。ボタンを離すと、これらの敵弾は自機から離れる方向へ一斉に発射され、敵への攻撃となります。このモスキートはG.H.B.ゲージが満タンの時のみ使用可能で、展開中はゲージが減少します。モスキートで反射された敵弾は「キューブ」と呼ばれるアイテムに変化します。
G.H.B.（グラビティホールボンバー）: ボタンをG.H.B.ゲージが尽きるまで押し続けることで発動します。無敵状態となり、画面全体を攻撃する強力なボンバーです。使用後はG.H.B.ゲージが一定時間チャージされなくなります。

また、本作は一般的なシューティングゲームとは異なり、敵本体との接触ではミスにならない仕様です。敵を破壊すると出現する金色のアイテム「キューブ」を取得することで経験値が得られ、通常ショットのレベルアップに繋がります。キューブを連続で取得すると、より多くの経験値を得られるようになります。この経験値はスコアの倍率にも影響しており、『ギガウイング』と同様にスコア稼ぎの面白さを提示するゲーム性も持ち合わせています。なお、アーケード版では比較的早い段階で最高スコア（カンスト）に到達可能でしたが、ドリームキャスト版ではスコアの桁数が増加されています。

グラフィックとサウンド、世界観

グラフィックは、当時の技術であったポリゴンのプリレンダリングを用いたソリッドな2D表現が特徴です。描かれる世界観は硬派で独特の雰囲気を持っています。サウンド面では、タクミコーポレーションの上西泰史氏が手掛けた、独特のミニマルかつアグレッシブなテクノサウンドがゲームの雰囲気を一層引き立てています。このサウンドトラックは現在廃盤となっており、高額なプレミア価格で取引されることもあります。

同社の別作品である『ギガウイング』とは、横画面縦スクロールという形式や、敵弾を吸収して攻撃に転用するシステムなど、いくつかの共通点が見られます。しかし、ゲームのストーリーや設定上の直接的な繋がりは存在しません。

ドリームキャスト移植版

2000年11月9日にカプコンから発売されたドリームキャスト移植版では、アーケード版からいくつかの変更点や追加要素があります。

スコアの最大桁数が2桁増加し、より高スコアを目指せるようになりました。
移植版オリジナルのオープニングムービーが追加されました。
新たにショップシステムが導入され、ゲーム中に獲得したキューブを換算して使用することで、様々な隠し要素を購入・解放できるようになりました。
やり込み要素として、ショップで購入可能な「アレンジモード」と「スコアアタックモード」が追加されました。
* オプション設定で、通常ショット、ピアシングキャノン、モスキート、G.H.B.の各攻撃にそれぞれ異なるボタンを割り当てられるようになり、1ボタン操作が苦手なプレイヤーでも比較的プレイしやすくなっています。

これらの要素により、ドリームキャスト版はアーケード版とはまた異なる魅力を持つバージョンとなっています。

『マーズマトリックス』は、その個性的な操作システム、硬派な世界観、そして中毒性の高いゲーム性により、今なお一部のシューティングゲームファンに愛され続けているタイトルです。

もう一度検索