マーチャーシュ1世 (ハンガリー王)

マーチャーシュ1世の生涯と業績

マーチャーシュ1世（ハンガリー語：I. Mátyás、1443年2月23日 - 1490年4月6日）は、1458年から1490年までハンガリー王を務め、同時に1479年からはボヘミア王の対立王としても知られています。彼は「正義王」との異名を持ち、ルネサンス文化の普及に大きな影響を与えました。マーチャーシュという名前は、彼の家系に由来するもので、コルヴィヌスは「カラスの人」というラテン語名です。彼の治世は、中世ハンガリーの最盛期として評価されています。

治世と戦争の功績

マーチャーシュ1世は、オスマン帝国との戦いにおいて直接的な軍事行動をあまり取らなかったものの、内政を安定させるために創設した常備軍を用いて権力を強化しました。1456年には、父フニャディ・ヤーノシュの死後、ハンガリー貴族の内紛を経て王に選ばれました。彼の治世の初めには、ワラキア公ヴラド3世（ドラキュラ）との同盟を結びつつ、ライバル勢力に対して巧妙に外交戦略を駆使しました。

また、1479年にはオロモウツの和約を結び、オーストリア大公国の支配権を得ることに成功します。さらに、シレジアやモラヴィア、ラウジッツを制圧し、一時はウィーンを占領するまでに至りました。これにより、ハンガリー王国の最も広大な版図が形成され、彼の権威はますます高まりました。

しかし、1490年に突然の死を遂げたため、彼の後を継ぐ者がいなかったことから、ハンガリーは大貴族の影響力が強まり、内部抗争が再燃し、その後のモハーチの戦い（1526年）ではオスマン帝国に破れます。

結婚と家族

マーチャーシュ1世は最初の妃、ボヘミア王イジーの娘カテジナと結婚しましたが、140日余りで死別しました。その後、ナポリ王フェルディナンド1世の娘ベアトリーチェと再婚しましたが、いずれの妻との間にも子供を授かりませんでした。一方、平民女性バルバラ・エーデルペックとの間に庶子コルヴィン・ヤーノシュが生まれましたが、マーチャーシュ1世は彼を王位の後継者にしようとしましたが、実現には至りませんでした。

ルネサンス文化の振興

彼の治世下、ハンガリーはルネサンス文化の中心地となり、イタリアからの建築家や文化人を招くなどして積極的に文化振興を行いました。首都ブダでは、様々な文化的活動が活発に行われ、若者に対して外国留学を奨励しました。また、ポジョニ（現在のブラチスラヴァ）には大学を設立し、王立図書館においてもコルヴィナ文庫として知られる膨大な写本を収集しました。

マーチャーシュ教会とその伝説

ブダ王宮の丘に位置するマーチャーシュ教会は、彼に関連する代表的な建築物であり、彼が増築し、結婚式を挙げたことからこの名で呼ばれるようになりました。この教会は、ハンガリーの歴代の王の戴冠式が行われる場でもありました。16世紀にはオスマン帝国に占領され、一時モスクとして利用されましたが、その後カトリック教会に返還され、近代的な改修も行われてきました。

最後に、マーチャーシュ1世にまつわる数多くの伝説があり、身分を隠して人々の生活を視察する姿は、日本の『水戸黄門』に似たイメージを持たれています。彼の名は歴史に深く刻まれ、ルネサンス時代のハンガリーを象徴する存在として語り継がれています。

もう一度検索