マーティン JRM

マーティン JRMについて

マーティン JRMは、アメリカのマーティン社が第二次世界大戦中に開発した飛行艇で、その愛称は「マーズ」と呼ばれています。この機体は元々大型哨戒爆撃飛行艇を基にしており、1938年8月に試作案が承認されました。その設計は、太平洋航路用に特化した4発旅客飛行艇モデル130を大規模に拡張したもので、全幅が1.5倍に、全長が1.3倍に増加し、装備重量は約3倍に及びます。

この巨大な飛行艇は、航続距離7000kmを誇り、広大なアメリカ本土沿岸やハワイ諸島を効率的に防衛することを目的とされていました。機内には、完全武装の兵員138名を収容可能であり、座席を外すことで84床の担架と25名の看護兵のスペースも確保されています。

しかし、その巨体のために生産には時間がかかり、1942年にようやく1号機が完成しました。同年7月3日に初飛行が行われましたが、当時の技術の進歩により、長距離の哨戒に陸上機が十分であることがわかり、飛行艇は長距離輸送機として転用されることとなりました。これに伴い、1945年1月には海軍が20機を発注しましたが、戦争が終結したため、最終的には6機のみが生産され、残りはキャンセルされました。生産された機体はカリフォルニアの基地で輸送任務に使用されました。

現在、2010年の時点で2機が民間の森林消火活動に使用されています。これらの機体は、水上を滑走する際に約30トンの水をタンクに取り込み、空中で3秒ほどで散布する能力を持っています。

各型

マーティン JRMには複数のバリエーションが存在します。

XPB2M-1

社内名はモデル170(Model 170)です。最初の試作機は1機のみ製作され、後にXPB2M-1Rに改造されました。エンジンはライトR-3350-8を搭載しています。

XPB2M-1R

この型は輸送機型として改造され、1943年12月に完成しました。武装を撤去し、貨物ハッチや荷役設備が追加され、貨物ハッチも拡大されました。

JRM-1

長距離輸送型で、社内名はモデル170A（Model 170A）です。このモデルでは垂直尾翼と水平尾翼が単尾翼式に改められ、胴体も延長されています。最大離陸重量を増加させるため、隔壁が減少され、ライトR-3350-24WAエンジンが搭載されています。プロペラも4翅型に変更されています。

20機が発注されましたが、最終的には6機に減少しました。生産された機体のうち、4機は貨物ハッチと貨物クレーンを装備したJRM-3に改造され、最終生産機は仕様を変更したJRM-2として完成しました。

JRM-2

これは、JRM-1の最終生産機であり、改造前の第6号機に基づいています。エンジンとプロペラが変更され、総重量は20,000ポンドに増加しました。搭載されるエンジンはプラット＆ホイットニー R4360-4Tで、プロペラは直径16フィート8インチの型に変更されています。

JRM-3

社内名はモデル170B（Model 170B）で、ライトR-3350-24WAエンジンと可変ピッチ機構を持つプロペラが搭載されています。JRM-1から4機が改造されて製作されました。

諸元

マーティン JRMはその巨体と性能において、当時の他の航空機とは一線を画す存在でした。多用途での運用が可能であり、戦争の終焉後もその機体は様々な形で活用されている点が、航空機史における特記すべき事例です。

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