マーティ・フェルドマン

1934年 7月8日に生まれ、1982年12月2日にこの世を去ったマーティ・フェルドマンは、イギリス出身の多才なパフォーマーでした。俳優、コメディアン、そして脚本家として、特にその独特な外見と知的なユーモアで広く記憶されています。

生い立ちからコメディの世界へ

ロンドン東部のイーストエンドで生まれたフェルドマンは、ウクライナのキエフから移住してきたユダヤ系の家庭に育ちました。若い頃からバセドウ病を患っていた彼は、孤独な少年時代を過ごしたとされています。15歳で学校を辞めた後、東部の遊園地で働くなど様々な経験を積みましたが、20歳の時にコメディアンとして生きる道を志しました。

1954年、同じくコメディアン志望だったバリー・トゥックと共に、コメディの脚本執筆を開始します。彼らが手がけた作品は、次第にテレビやラジオの番組で採用されるようになり、脚本家として頭角を現しました。そのキャリア初期において重要な転機となったのは、1967年に始まったスケッチ・コメディ番組『At Last the 1948 Show』への出演です。これが彼のテレビデビューとなり、後の活動に大きな影響を与えました。この番組では、後に「モンティ・パイソン」のメンバーとなるジョン・クリーズやグレアム・チャップマンらと共演し、パフォーマーとしての才能を開花させると同時に、イギリス国内でのコメディアンとしての認知度を大きく高めるきっかけとなりました。

英国での成功と国際的な飛躍

『At Last the 1948 Show』以降、フェルドマンは数々のコメディ番組に出演し、コメディ俳優としてのキャリアを着実に築き上げました。自身の脚本も担当した人気番組『マーティ』では、パフォーマーとしての才能が高く評価され、英国映画テレビ芸術アカデミー賞を二度にわたって受賞しています。さらに1971年には、自身の冠番組『The Marty Feldman Comedy Machine』がスタート。この番組を通じて、彼のユニークなコメディセンスはイギリス国内にとどまらず、アメリカへも知られるようになりました。

アメリカへの進出を果たした後は、人気歌手ディーン・マーティンがホストを務める『ディーン・マーティン・ショー』など、現地の番組にも出演しました。この時期に、後に彼のキャリアにおいて重要な人物となる俳優ジーン・ワイルダーと出会います。そして、ジーン・ワイルダー主演、メル・ブルックス監督によるホラー・コメディの傑作『ヤング・フランケンシュタイン』（1974年）で、彼はアイゴール役を演じ、世界的な知名度を獲得しました。この作品はアメリカ国内でも大ヒットを記録し、その怪演は観客に強烈な印象を残しました。フェルドマン自身も、この役でSF・ファンタジー・ホラー映画アカデミー賞を受賞しています。

『ヤング・フランケンシュタイン』での成功を機に、彼はジーン・ワイルダーやメル・ブルックスと親密な関係を築き、その後も彼らの作品に度々出演しました。ワイルダーが監督した『新シャーロック・ホームズおかしな弟の大冒険』（1975年）や、ブルックス監督の『メル・ブルックスのサイレント・ムービー』（1976年）などに出演し、『サイレント・ムービー』ではゴールデングローブ賞にもノミネートされるなど、俳優としての評価を不動のものにしました。また、1976年にはイタリア映画『Sex with a Smile』に主演するなど、イギリスやアメリカ以外での活動も行いました。1977年の『Oh! 外人部隊』では、出演するだけでなく、監督、脚本、原案も兼任し、その多才ぶりを遺憾なく発揮しました。

私生活と突然の死

私生活では、1959年にローレッタ・サリヴァンと結婚し、その関係は彼が亡くなる1982年まで続きました。ローレッタ夫人は2010年にロサンゼルスで亡くなっています。また、フェルドマンは音楽にも深い興味を持っており、特にジャズを好んでいました。1969年には『I Feel a Song Going Off』というLPレコードを制作しましたが、これが最初で最後の音楽作品となりました。

1982年12月2日、グレアム・チャップマンやピーター・ボイルらが出演したコメディ映画『チーチ&チョン/イエローパイレーツ』の撮影のためにメキシコに滞在中、心臓発作により突然この世を去りました。まだ48歳という若さでした。盟友メル・ブルックスは、フェルドマンが時に一日6箱ものタバコを吸ったり、過度の飲酒をしていたことが、その早すぎる死の原因となった可能性を示唆しています。彼の遺体は現在、ハリウッドの墓地に埋葬されています。

マーティ・フェルドマンは、そのユニークな才能と強烈な個性で、英国コメディ界からハリウッドまでを股にかけ活躍しました。俳優、脚本家、監督として多方面で才能を発揮し、特に『ヤング・フランケンシュタイン』のアイゴール役は、今なお多くの人々に愛されています。彼の突然の死は惜しまれつつも、その作品は色褪せることなく、今もなお多くの人々に笑いを届けています。

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