マールス

マールス：戦と農耕のローマ神

マールス（Mārs）は、ローマ[[神話]]における戦争と農耕の神であり、一般的に「マルス」や英語の「マーズ」とも呼ばれています。彼はローマ建国時から存在した神であり、その信仰は長い歴史を持っています。元の名称はマーウォルス（Māvors）であり、マーメルス（Māmers）とも知られています。

神格と役割

マールスは、ギリシア[[神話]]のアレースと同一視されることがありますが、彼はローマにおいては異なる役割を持っています。アレースが疫病や災厄の象徴とされるのに対し、マールスは勇敢で理想的な戦士の形象を持ち、強く崇拝される存在です。彼は、軍神グラディウゥス（Gradīvus）としても知られています。この異名は「進軍する者」という意味を持ち、彼の軍事的な特性を表しています。また、マールスの聖獣は狼であり、聖鳥はキツツキとされています。

マールスは農業とも深い関係を持ち、彼の祭りは春の到来と結びついています。ローマ暦では新年が3月に設定されており、これは農耕の始まりを示しています。彼がローマの創設者ロームルス王の父親として伝承されるほど、重要な存在であることを示しています。

歴史的背景

学説によれば、マールスは元々は農耕神として崇拝されていましたが、のちに戦神としての側面が強調されるようになりました。彼は勇敢なロームルス王と重なり合い、軍神としても祭りが行われるようになったと考えられています。さらには、彼の地下神としての側面から、死者との関係を持つとされることもありました。

しかし、近年の比較神話学の進展により、マールスは最初から軍神であったとされています。彼の名前自体は、エトルリアの神マリスに由来していると考えられています。マールスから派生したローマ人の名前には「マルクス」、「マルケッルス」、「マリウス」、「マルティヌス」などがあり、これらはヨーロッパ各地で多様な形で使われています。

文化的影響

マールスは天体の火星と同一視されることもあり、彼の名前は戦争や勇気を象徴するものとされています。ルーヴル美術館の彫刻「ボルゲーゼのアレス」では、本来アレースであるはずの神が「マルス」として親しまれています。また、スペイン語で火曜日を指す「martes」は、「軍神マルスの日」という意味合いを持ちます。

本来、マールスは男性の闘争心や武勇を象徴する存在であり、ウェヌス（ヴィーナス）が愛や女性を表すのに対し、マールスは武力や男性性の象徴として使われることが多いのです。性別記号の「♂」は、実際にはマールスを象徴する記号でもあります。

マールスという神は、ローマの文化と歴史に深く根付いた存在であり、その影響は現代に至るまで続いています。

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