ミステリアス・ウェイズ

ミステリアス・ウェイズ (Mysterious Ways)

「ミステリアス・ウェイズ」は、アイルランドのロックバンド、U2が1991年にリリースしたシングルです。この曲は、同年に発表された彼らの革新的なアルバム『アクトン・ベイビー』から2枚目のシングルとしてカットされ、商業的にも成功を収めました。特にアメリカではBillboard Hot 100チャートで最高9位を記録し、U2にとって4作目の全米トップ10シングルとなりました。楽曲のファンキーなグルーブは、それまでの彼らのイメージを覆すものであり、新たな音楽的探求を示す作品となりました。

楽曲制作の背景

この楽曲の原型は、U2が別のプロジェクト「Night and Day」のセッション中にアダム・クレイトンが生み出したベースラインに遡ります。このベースラインを基に、ボノ、エッジ、アダムの3人がドラムマシーンを使ってジャムセッションを行い、「Sick Puppy」という仮称のデモが制作されました。しかし、このデモから楽曲を完成させる道のりは平坦ではありませんでした。特にメロディの構築には困難が伴い、メンバー間での議論も激化しました。ある時などは、ボノとプロデューサーであるダニエル・ラノワが2時間にもわたり白熱した議論を交わし、エンジニアのジョー・オハーリーが喧嘩になるのではないかと心配するほどの状況だったといいます。

楽曲制作が難航する中で、皮肉にもこの曲に取り組んでいたことがきっかけで、バンドは後に代表曲となる「One」を生み出すことになります。「One」の誕生はレコーディング全体の流れを好転させ、「ミステリアス・ウェイズ」の制作も再び前進しました。エッジが楽曲に力強いギターコードを加え、最後にラリー・マレン・ジュニアがドラムマシーンとは一線を画す、生演奏ならではのグルーブ感溢れるドラムを叩き込むことで、ついに楽曲は完成を迎えました。「ミステリアス・ウェイズ」は「One」と共に、バンドがベルリンのハンザスタジオで録音した楽曲のうち、ダブリンへ拠点を移す前に完成した数少ない曲の一つです。完成後も、ギターのサウンドについてはレコーディング終了まで何度もオーバーダブが繰り返され、サウンドの追求が続けられました。

歌詞と評価

歌詞のテーマは、当初アルバムのタイトル候補にも挙がっていた『Fear of Women』（女性への恐れ）に関連するもので、ロマンチックな感情に不器用な男性の視点から描かれています。しかし、その男性像を通して、逆説的に女性という存在の不可思議さや魅力についても触れられています。エッジの提案により、歌詞には「Johnny, take a walk with your sister in the moon / Let her pale light in to fill up the room」といった童謡のような韻を踏むフレーズや、これもエッジのアイデアで「It's all right / It's all right / It's all right」という反復フレーズが取り入れられました。

ボーカルのボノは、この曲のサウンドについて「U2の長い歴史の中で最もファンキーな楽曲だ」と評しており、「Sly & The Family Stoneがマッドチェスター・ムーブメントと出会ったかのようだ」と、その斬新なグルーブ感を表現しています。

シングルリリースとリミックス

「ミステリアス・ウェイズ」のシングルは、発売形態によって様々なバージョンのリミックスが収録されました。7インチやカセット、8cmCDシングルから、12インチや12cmCDシングルまで、多様なフォーマットでリリースされ、それぞれのB面には異なるリミックスが収められています。特に、ポール・オーケンフォールドとスティーヴ・オズボーンが手掛けた「Perfecto mix」はクラブシーンで絶大な人気を獲得し、原曲の持つ可能性を広げました。その他にも、Solar Plexus名義やApollo 440、The Stereo MC's（Ultimatum）など、多くの著名なプロデューサーやDJによるリミックスが制作され、その多様性は楽曲が持つ幅広い音楽性を示しています。

ミュージックビデオとライブパフォーマンス

楽曲のプロモーションとして制作されたミュージックビデオは、ステファン･セドゥナウィが監督を務めました。モロッコのフェズにあるターナーズ・クォーターで1991年10月に撮影されたこのビデオは、エキゾチックな雰囲気の中でベリーダンサーが登場する印象的な映像作品となりました。なお、ビデオに登場するベリーダンサーは、当時エッジの妻であったモーリー・スタインバーグではありません。

「ミステリアス・ウェイズ」は、U2のライブにおける定番曲の一つとなりました。特に『Zoo TVツアー』では、スタジオバージョンにはないボノのファルセットによる新たなイントロの歌詞やエッジのピアノ、そしてアウトロでのエッジのギターソロが追加され、楽曲はより長く、よりダイナミックに演奏されました。ライブではベリーダンサーが登場し、ステージパフォーマンスを視覚的にも盛り上げました。当初この役割はクリスティーナ・ペトロが担っていましたが、後にモーリー・スタインバーグに交代しています。『Popmartツアー』や『Elevationツアー』でも頻繁に演奏され、特に『Elevationツアー』時のアイルランドでのライブを収めたDVD「U2 Go Home」では、ボノの娘であるイブ・ヒューソンがステージ上でダンスを披露する微笑ましいシーンが記録されています。その後の『Vertigoツアー』や『360度ツアー』では一時的に演奏頻度が減り、追加されていたイントロやアウトロもカットされましたが、『360度ツアー』の終盤で再び演奏されるようになり、その際にはボノが観客をステージに招き入れて共に踊るなど、曲は常に進化し、ライブ会場を熱狂させてきました。

その他の展開

この楽曲は、他のアーティストによってカバーもされています。インダストリアル・ロックバンドのKMFDMや、クリスチャン・ヒップホップアーティストのトビーマックなどが、それぞれの解釈でこの曲を取り上げています。また、楽曲やそのリミックスは、音楽業界からも高い評価を受けました。1991年のヴィレッジ・ボイス紙の年間シングルリスト「Pazz＆Jop」で25位にランクインしたほか、1992年にはビルボード・ミュージック・アワードで「ナンバー1トラック・アーティスト賞」を受賞するなど、その革新性と影響力は広く認められています。

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