ミスワカサ・島ひろし

ミスワカサ・島ひろし：昭和の漫才界を彩った夫婦漫才師

ミスワカサ・島ひろしは、昭和時代の戦中から戦後にかけて活躍した、日本を代表する男女漫才コンビです。一般的な漫才コンビとは異なり、師匠であるミスワカサと、弟子の島ひろしの師弟関係で構成されていました。夫婦漫才師ではありませんが、息の合った掛け合いと、歌やアクションを取り入れたダイナミックなパフォーマンスで、多くの観客を魅了しました。

ミスワカサ（本名：今岡鈴代）

1921年5月5日生まれ、京都府京都市出身のミスワカサ。父親がレコード店やダンス教室を経営していた環境で育ち、幼少期から歌や演芸に親しみます。抜群の記憶力と天性の音感の持ち主で、一度聴いた落語や流行歌をすぐに覚えてしまうほどでした。小学校時代には、雨で体育の授業が中止になった際に、教室で桂春団治の落語を披露し、クラスメイトを沸かせた逸話も残っています。

若くして満州でダンサーとして活躍した後、「岡輝子」の名で歌手活動も経験。その後、「岡テル子」を経て1944年に「ミスワカサ」と改名し、漫才師としての道を歩み始めます。持ち前の美貌と歌唱力を活かし、華やかな舞台を展開しました。しかし、心臓の持病を抱えており、1974年9月、4月からの体調悪化を乗り越えられず、静養の末に逝去しました。

島ひろし（本名：三浦定四郎）

1912年10月28日、福島県会津生まれの島ひろしは、俳優を目指して浅草の劇団で経験を積みます。「歌う剣戟」の劇団を経て、大阪の吉本興業と契約。その後、小さな劇団やボーイズ芸の舞台にも立っています。岡テル子（後のミスワカサ）が彼の芸に惚れ込み、漫才への転向を促したことが、コンビ結成のきっかけとなりました。9歳年下のミスワカサの弟子として、漫才の世界へ足を踏み入れました。

ミスワカサの死後も、漫才への情熱を燃やし続けました。1975年1月からは島キクコと、その後もミスウララや木村栄子らとコンビを組み、舞台に立ち続けます。晩年には関西演芸協会会長も務め、漫才界に大きく貢献しました。1989年4月30日逝去。

ミスワカサ・島ひろしコンビの軌跡

1943年、「岡テル子・島ひろし」としてコンビを結成。戦後、宝塚新芸座の座員となり、朝日放送ラジオの『漫才学校』などで人気を獲得しました。『上方演芸会』など数多くのラジオ番組にも出演し、人気を博しました。

彼らの芸風は、ミスワカサの師であるワカナ・一郎譲りの「女性上位漫才」でした。早口でまくしたてるミスワカサに対し、島ひろしは常に突っ込まれる役回りでした。しかし、二人の息はぴったりと合い、絶妙な掛け合いが観客を惹きつけました。

ミスワカサの歌唱力と、島ひろしの殺陣を活かしたパフォーマンスは、まさに彼らの代名詞。特に、島ひろしによる阪東妻三郎などの剣戟映画の名優の物まねは「剣戟漫才」として人気を博しました。

1974年1月、道頓堀角座での公演が最後の舞台となりました。絶大な人気を得たにもかかわらず、主要な漫才賞を受賞することはありませんでした。しかし、没後2007年には、上方演芸の殿堂入りを果たし、その功績は後世に語り継がれています。

記録メディアと映像作品

彼らの漫才は、いくつかの音源や映像作品として残されています。コロムビアやキングレコードから発売されたLPレコードやCDには、代表的なネタが収録されています。また、松竹や宝塚映画、東映京都の作品など、数々の映画にも出演しており、その活躍ぶりは多岐に渡ります。

弟子たち

ミスワカサ・島ひろしは多くの弟子を育成し、漫才界の後進を育成しました。ミスひろみ、島ぽん太、島啓児、島若夫など、多くの弟子たちが彼らの教えを受け、漫才師として活躍しました。

まとめ

ミスワカサ・島ひろしは、戦中から戦後にかけて活躍した、個性豊かな漫才コンビでした。夫婦漫才師ではないという点、そして、歌やアクションを取り入れたダイナミックな芸風は、多くの観客を魅了しました。彼らの功績は、漫才史に燦然と輝くものと言えるでしょう。

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