ミズーリ妥協

ミズーリ妥協: 歴史的背景と影響

ミズーリ妥協（Missouri Compromise）は1820年にアメリカ合衆国で成立した重要な政治的取り決めであり、奴隷制に関する双方の立場を反映したものでした。この妥協は、特に西部領土における奴隷制の扱いに焦点を当てており、北緯36度30分の線を境に奴隷制を制限する内容を含んでいます。この取り決めにより、当時のアメリカ合衆国は未曾有の分裂の危機を迎えていました。

妥協に至る経緯

1818年、ミズーリ州が奴隷州として州昇格を求める動きが始まりました。この際、アメリカ合衆国下院では奴隷制に関する妥協案が拒否され、南北州間の権力闘争が激化しました。特に、奴隷州と自由州の数が同じであったため、新たな州の昇格が政局に与える影響が懸念されていました。1819年12月にはアラバマ州が奴隷州として昇格したことで、状況はさらに複雑化し、ミズーリ州が州昇格することは公正な議会運営に対する懸念を呼び起こしました。

1820年1月、ニューヨーク州のジョン・W・テイラー議員の提案により、ミズーリ州を奴隷州として昇格させる法案が下院で通過しました。同時に、メイン州を自由州として昇格させる案も成立し、これらの条件を結び付けた形で両院協議会へと進みました。最終的に、メイン州とミズーリ州の昇格に関する法案は1820年3月5日に成立し、3月6日にはジェームズ・モンロー大統領により批准されました。

政治的な影響

この妥協は、トーマス・ジェファーソンが示唆したように、国を分断させる要因ともなり、合衆国の将来に深刻な影響を及ぼすものでした。特に、国の分裂を強めるものとされ、その後の南北戦争へと繋がる兆しともなりました。アメリカ合衆国憲法の観点から見ると、この妥協は北西部条例以降初めて、議会が公有地から奴隷制を排除する動きとして歴史的な意味を持ちます。

第二のミズーリ妥協

1820年から1821年の会期には、ミズーリ州の新憲法において自由黒人や混血の排除が求められる規定が問題となりました。この問題はヘンリー・クレイの仲介により修正され、あいまいな条件の下で州昇格が認められる形となりました。これが「第二のミズーリ妥協」として知られるようになりました。

撤廃までの流れ

ミズーリ妥協における奴隷制禁止の規定は、1854年のカンザス・ネブラスカ法によって実質的に撤廃されました。この法律に対しては、多くの市民が反発し、著名な政治家たちが意見を述べましたが、法案は無事に成立しました。さらに1857年には「ドレッド・スコット対サンフォード事件」において、合衆国最高裁判所が妥協の法に違憲と裁定しました。この裁定は、奴隷制が国の法律において受け入れられるべきであるか否かの議論を新たに呼び起こしました。

まとめ

ミズーリ妥協は、アメリカの奴隷制問題を巡る複雑な歴史の中で、彼の時代における重要な政治的取り組みでした。これにより、アメリカ社会は深刻な亀裂を抱えることとなり、将来的に南北戦争を招く要因となりました。

もう一度検索