ミセス・パーカー/ジャズエイジの華

ミセス・パーカー/ジャズエイジの華：才能と苦悩の物語

1994年制作のアメリカ映画『ミセス・パーカー/ジャズエイジの華』は、華やかなジャズエイジのニューヨークを舞台に、作家ドロシー・パーカーの生き様を克明に描いた作品です。監督はアラン・ルドルフ、製作はロバート・アルトマンという、実力派のスタッフ陣が結集しました。

映画は、ニューヨークのアルゴンキンホテルに集う文豪たちのサロン、「アルゴンキン・ラウンド・テーブル」を中心に展開します。このサロンは、詩人、作家、コラムニストなど、時代の最先端をいく才能が集う場所でした。彼らは、ホテルのレストランに用意された大きな丸テーブルを囲み、活発な議論や批評を交わし、その後のアメリカ文化に大きな影響を与えました。

主人公ドロシー・パーカーは、このサロンの中心人物の一人です。機知に富んだ辛口の文章で知られる彼女は、複雑な恋愛関係や創作活動の苦悩を抱えながら、華麗で奔放な人生を送ります。

映画では、ドロシーの奔放な恋愛模様が描かれています。彼女は、第一次世界大戦帰還兵である夫エディとの関係に悩んだ末、演劇記者のチャールズ・マッカーサーと恋に落ちます。しかし、プレイボーイ気質なチャールズとの関係は、ドロシーに大きな苦痛をもたらします。妊娠したドロシーは、チャールズの裏切りに絶望し、中絶という辛い決断を迫られ、ついには自殺未遂にまで追い込まれます。

そんなドロシーを救ったのは、アルゴンキン・ラウンド・テーブルのメンバーであるロバート・ベンチリーです。ユーモラスな漫談で知られるベンチリーは、後にラジオ、舞台、映画で成功を収める人物ですが、映画ではドロシーを支える重要な存在として描かれています。ドロシーはアルゴンキンホテルに住み込み、ベンチリーの支えを受けながら創作活動に励みますが、創作の苦悩から、次第にタバコとアルコールに溺れていく姿が切なく描かれています。

映画は、ドロシーを取り巻く個性豊かな人物たちも丁寧に描いています。アルゴンキン・ラウンド・テーブルのメンバーである、エドナ・ファーバー、ロバート・シャーウッド、ウィル・ロジャースなど、錚々たるメンバーが登場します。それぞれの個性と人間模様が、ドロシーの人生と絡み合いながら、1920年代のニューヨークの文化シーンを鮮やかに彩ります。

ジェニファー・ジェイソン・リーは、ドロシー・パーカーの複雑な内面を巧みに表現し、高い評価を獲得しました。彼女の演技は、第29回全米映画批評家協会賞と第7回シカゴ映画批評家協会賞で主演女優賞を受賞するなど、高く評価されています。

興行的には成功を収めませんでしたが、『ミセス・パーカー/ジャズエイジの華』は、批評家から高い評価を受け、第47回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールにもノミネートされました。ジャズエイジのニューヨークの華やかな雰囲気と、ドロシー・パーカーの激動の人生、そして時代を彩った才能たちの群像劇は、今もなお多くの観客を魅了し続けています。この映画は、才能と苦悩、そして時代の流れの中で生きた一人の女性の物語として、長く記憶に残る作品となっています。

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