ミッテルバウ＝ドーラ強制収容所

ミッテルバウ＝ドーラ強制収容所は、ドイツがテューリンゲン地方のノルトハウゼンとエルリッヒの間に位置するコーンシュタイン丘に建設した収容所です。この収容所は、ドイツ軍の秘密兵器であるV1飛行爆弾やV2ロケットの開発拠点として知られています。収容所は「ドーラ」と呼ばれ、その周囲の工場群を「ミッテルバウ」と総称し、これらを合わせて「ミッテルバウ＝ドーラ」と呼ばれていました。

歴史

1943年、第二次世界大戦中にブーヘンヴァルト強制収容所の労働分遣隊が、連合軍の空襲を避けるために兵器生産施設を地下化する目的で、コーンシュタイン丘の掘削と収容所の建設を開始しました。同年8月、ペーネミュンデの軍事基地が空爆され、V1とV2ロケットの試験場が被害を受けたため、これらの開発拠点をミッテルバウ＝ドーラに移設する命令が下りました。当初、ミッテルバウ＝ドーラはブーヘンヴァルト強制収容所の外部収容所でしたが、1944年10月28日に独立した収容所として認められました。その後、ミッテルバウ＝ドーラの労働分遣隊は、いくつかの外部収容所を構成しました。

ミッテルバウ＝ドーラは、厚さ100メートルの結晶片岩層によって空からの攻撃から守られていました。収容所内では、常時6000人の囚人と同数のドイツ人一般市民がV1、V2ロケットの製造に従事していました。囚人の多くはロシア人やフランス人でした。1945年4月初めには、周辺都市が空襲で壊滅し、収容所の運営も事実上不可能となりました。同年4月10日、アメリカ軍が同地を占領し、収容所が解放されました。

ミッテルバウ＝ドーラにはガス室は存在しませんでしたが、多くの囚人が命を落としました。当初、遺体は森で荼毘に付されていましたが、後に火葬場が設けられ、少なくとも5000人以上の遺体が火葬されたとされています。

構造

収容所は、丘を貫通する2本の平行なトンネル（AとB）によって構成されていました。これらのトンネルは全長3キロメートルに及び、南から北へと伸びていました。AとBのトンネルの間には、約40本の連絡通路である「ギャラリー」が設けられ、トンネル間を行き来できるようになっていました。ギャラリーは約250メートルで、トンネルAから送られてきた部品は、ギャラリー内の作業場で組み立てられ、トンネルBを通ってV1、V2ロケットとして搬出されていました。ロケットは、トンネルBの南側出口から鉄道で爆薬充填工場へと移送されました。

所長

オットー・フォーシュナー（1943年9月～1945年2月）
リヒャルト・ベーア（1945年2月～）

参考文献

* マルセル・リュビー著、菅野賢治訳、『ナチ強制・絶滅収容所 18施設内の生と死』（筑摩書房）ISBN 978-4480857507

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