ミニスーパーコンピュータ

ミニスーパーコンピュータとは

ミニスーパーコンピュータは、1980年代中頃に登場したコンピュータの一形態です。当時のスーパーコンピュータは非常に高価で、企業全体で共有するような大規模なシステムでした。しかし、ベクトルプロセッサによる科学技術計算が一般化するにつれて、より手軽に利用できる、部門レベルでの利用を想定した低価格なシステムへの需要が高まりました。このニーズに応える形で、新たなコンピュータ企業がミニスーパーコンピュータ市場に参入しました。

ミニスーパーコンピュータの価格帯は、大型のスーパーコンピュータの約1/10程度に抑えられていました。主な特徴として、ベクトル処理と小規模なマルチプロセッシングの組み合わせが挙げられます。これにより、科学技術計算において高いパフォーマンスを発揮することが期待されました。

ミニスーパーコンピュータの衰退

1990年代に入ると、状況は一変します。高性能なFPU（浮動小数点演算ユニット）を内蔵したマイクロプロセッサを搭載した、科学技術計算向けのワークステーションが低価格で登場したのです。MIPS R8000やIBM POWER2などがその代表例です。これらの高性能ワークステーションは、ミニスーパーコンピュータが得意としていた分野を侵食し始めました。

初期のワークステーションに駆逐されたミニコンピュータと同様に、ミニスーパーコンピュータも高性能ワークステーションの台頭によって市場から姿を消していきました。より高性能で汎用的なワークステーションが、コストパフォーマンスに優れていたため、ミニスーパーコンピュータの優位性は失われたのです。

ミニスーパーコンピュータのその後

ミニスーパーコンピュータという言葉は、一般的には使われなくなりましたが、そのコンセプトは完全に消滅したわけではありません。例えば、1999年に発売されたNECのSR8000コンパクトモデルや、SXシリーズのラインナップに2005年に追加されたSX-8iなどは、比較的小規模なスーパーコンピュータと言えるでしょう。

近年では、複数枚の高性能GPGPU（General-Purpose computing on Graphics Processing Units）を搭載する、デスクサイドに設置可能な大型タワー筐体サーバなども登場しています。これらは、かつてのミニスーパーコンピュータのように、特定の部門や研究室で手軽に利用できるスーパーコンピュータとしての役割を担っています。

主要なミニスーパーコンピュータ企業

ミニスーパーコンピュータの時代を彩った主な企業としては、以下のような企業が挙げられます。

アライアント・コンピュータ (Alliant Computer): 1982年創業 (当初はデータフロー・システムズ)、1992年倒産
コンベックス・コンピュータ (Convex Computer): 1982年創業 (当初はParsec)、1995年ヒューレット・パッカードに買収
フローティングポイント・システムズ (Floating Point Systems): 1970年創業、1991年クレイ・リサーチに買収
マルチフロー (Multiflow): 1984年創業、1990年廃業
Scientific Computer Systems: 1983年創業、1989年高速ネットワーク機器開発に転業したが既に廃業
SuperTek: クレイ・リサーチに買収

これらの企業は、独自のアーキテクチャや技術を開発し、科学技術計算の分野に貢献しました。しかし、時代の変化とともに、その多くが姿を消してしまいました。

ミニスーパーコンピュータは、短命に終わったコンピュータの形態でしたが、そのコンセプトは、現在の高性能ワークステーションやGPGPU搭載サーバなどに受け継がれています。科学技術計算の分野におけるニーズは常に変化しており、それに合わせてコンピュータの形態も進化していくのです。

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