ミハイ1世 (ルーマニア王)

ミハイ1世：ルーマニア王国の最後の国王

ミハイ1世（1921年10月25日-2017年12月5日）は、ルーマニア王国の最後の国王として知られています。6歳と若くして王位に就き、その後も幾多の政治的混乱の中を生き抜き、波乱に満ちた生涯を送りました。本稿では、ミハイ1世の生涯、家族、系譜、そして功績について詳細に見ていきます。

幼少期と最初の即位

ミハイ1世は、1921年、ルーマニア王太子カロルとギリシャ国王コンスタンティノス1世の娘エレーニとの間に、ペレシュ城で誕生しました。イギリス女王ヴィクトリアの玄孫という、由緒ある家系に生まれたミハイでしたが、彼の生涯は平穏とは程遠いものとなりました。

祖父であるフェルディナンド1世の崩御により、1927年、6歳でミハイは国王に即位します。しかし、彼の父カロルは数々のスキャンダルから王位継承権を放棄しており、国外に逃亡していました。そのため、ミハイは摂政による統治の下、幼少期を過ごしました。

この状況は長くは続きませんでした。3年後、父カロルが帰国し、ミハイは王位を退き、カロル2世として父が国王に即位したのです。

二度目の即位と第二次世界大戦

カロル2世の統治は不安定で、1940年にはイオン・アントネスクの圧力により退位させられ、再び亡命することとなりました。これにより、ミハイは再び国王ミハイ1世として即位しました。

しかし、この二度目の即位は、憲法にも議会にも裏付けられたものではありませんでした。彼はアントネスクの独裁政権下で、実質的な権力を握ることができませんでした。ルーマニアは枢軸国側に加わり、第二次世界大戦に参戦することになります。

クーデターと退位

ドイツの敗色が濃厚になると、アントネスク政権も動揺し始めました。1944年8月23日、ミハイは閣僚らとクーデターを起こし、アントネスクを追放し、連合国側に転じます。しかし、ソ連軍の侵攻を阻止することはできず、ルーマニアはソ連の支配下に置かれました。

ミハイは親共産党政府の圧力を受けましたが、抵抗を試みました。しかし、ソ連のみならず、米英からも政府への協力が求められたため、彼は抵抗を断念せざるを得ませんでした。そして、1947年12月30日、軍による包囲の中で退位し、亡命を余儀なくされたのです。

亡命生活と晩年

亡命中は、スペインなど各地を転々とし、パイロットとして働くなど、様々な経験をしました。1989年のルーマニア革命後、一時帰国を許されましたが、その後もスイスを拠点に生活を送りました。

ルーマニア共和国政府とは良好な関係を保ち、公式には「陛下」と呼ばれ、国民的な尊敬を集めました。2011年には、退位後初めてルーマニア議会で演説を行い、国民統合の象徴として、国民からの支持を得続けました。

病気と死去

2016年には、慢性白血病と診断され、公的活動から引退。2017年12月5日、スイスで96歳で亡くなりました。

家族と系譜

ミハイ1世は1948年、ブルボン＝パルマ家のアンヌ・アントワネットと結婚し、5人の娘をもうけました。王位継承問題では、長女マルガレータ王女を継承者としたほか、ホーエンツォレルン＝ジグマリンゲン家との関係を断絶するなど、複雑な展開を見せました。

結論

ミハイ1世の生涯は、ルーマニア王国の歴史と深く結びついています。幼少期の即位、第二次世界大戦下での苦悩、そして亡命生活を経て、共和国においても国民的尊敬を集め続けた彼の物語は、現代史における重要な一章として記憶されるでしょう。彼の功績、そして激動の時代を生きた彼の経験は、現代社会に多くの示唆を与え続けているのです。

もう一度検索