ミュージック・ペンクラブ音楽賞

ミュージック・ペンクラブ音楽賞

ミュージック・ペンクラブ音楽賞（ミュージック・ペンクラブおんがくしょう）は、日本の音楽評論家、ジャーナリスト、研究者などが所属する専門家団体、ミュージック・ペンクラブ・ジャパンが毎年授与している音楽賞です。この賞は、音楽文化の振興と発展に寄与した顕著な業績を顕彰することを目的としています。

その起源は1987年、「音楽執筆者協議会」という現在のミュージック・ペンクラブ・ジャパンの前身団体が設立した「音楽執筆者協議会賞」に遡ります。その後、会の名称が1994年に「ミュージック・ペンクラブ・ジャパン」へと改められたことに伴い、授賞制度の内容も改めて検討されました。その結果、1997年度からは賞の名称が「ミュージック・ペンクラブ賞」へと変更されました。さらに、2005年度からは現在の正式名称である「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」となり、今日に至っています。

この賞の最大の特徴は、そのユニークな選考方法にあります。一般的に、多くの音楽賞は少数の選考委員や審査員によって受賞者が決定される方式をとっていますが、ミュージック・ペンクラブ音楽賞は違います。当賞では、約160名に及ぶミュージック・ペンクラブ・ジャパンの全会員による自主投票によって受賞者が選ばれるシステムを採用しています。さらに注目すべき点として、会員は自身の専門分野に限らず、クラシック、ポピュラー、オーディオといった他の分野の対象についても投票権を行使できることが挙げられます。この包括的かつ分野横断的な選考プロセスについて、主催団体であるミュージック・ペンクラブ・ジャパンは、「現代において、音楽文化のジャンル分けがもはや厳密な意味を持たなくなってきている状況に対応し、会員間の専門分野を超えた幅広い交流を促進するという、当会の性格を如実に示している」と説明しています。これは、多様化する音楽の世界全体を見渡す視点と、幅広い知識を持つ会員間の相互啓発を重視する団体の理念が反映されたものです。

ミュージック・ペンクラブ音楽賞の対象となるのは、原則としてその年の日本国内で公開または発表された音楽界における多岐にわたるプロダクツやイベント全般です。具体的には、CDやBlu-ray Discなどの録音・録画メディアとして発売された作品、コンサート、オペラ、バレエなどの実演公演、音楽に関する著作物（書籍、楽譜など）、さらには音楽技術の革新や開発などが含まれます。授賞の対象となるのは、これらの創造や実現に関わった当事者であり、音楽家、演奏家、作曲家だけでなく、企画者、著者、制作メディアの担当者、技術者など、音楽に関わる多様な関係者が候補となり得ます。選考にあたっては、「クラシック」「ポピュラー」「オーディオ」という主要な分野ごとに基準が設けられています。まず、各分野においてその年に最も優れた業績や作品が会員によってノミネートされます。ノミネートされた候補の中から、最終的な受賞者や受賞対象は、前述した全会員による分野を超えた投票の結果に基づいて決定されます。受賞作品および受賞者の発表と贈呈式は、毎年3月末または4月初頭に開催されるミュージック・ペンクラブ・ジャパンの総会の席上で行われます。この賞は、特定のジャンルに限定されず、音楽文化全体の多角的な発展に貢献した業績を評価するという点で、音楽界における独自の地位を確立しています。

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