ミューメタル

ミューメタルとは

ミューメタル（μ-metal）は、優れた磁気シールド特性を持つニッケル-鉄合金の一種です。パーマロイに分類され、主にニッケルと鉄をベースに、展延性を向上させるための銅やクロムなどが添加されています。この合金は、特に高い透磁率を持つことで知られ、外部からの磁場を遮蔽する用途に広く利用されています。

組成と製造

ミューメタルの一般的な組成は、ニッケルが約77%、鉄が約17%で、残りの数パーセントに銅やクロムが含まれます。製造プロセスでは、これらの金属を混合し、溶解・成形した後に、水素雰囲気中で磁場を印加しながら焼純（熱処理）を行います。この処理によって、ミューメタルの結晶構造が整い、透磁率が飛躍的に向上します。この焼純プロセスが、ミューメタルの優れた磁気特性を実現する上で非常に重要です。

透磁率とは

透磁率とは、物質が磁場をどれだけ通しやすいかを示す指標です。透磁率が高いほど、磁力線を通しやすく、磁気シールド効果が高くなります。ミューメタルは、非常に高い透磁率を持つため、外部からの磁場を効率的に遮蔽することができ、精密機器の誤動作を防ぐために不可欠な材料となっています。

ミューメタルの用途

ミューメタルの主な用途は、外部磁場からの遮蔽です。具体的には以下のような分野で活用されています。

1. 海底ケーブル: 海底に敷設される通信ケーブルは、地球の磁場や外部の電磁波の影響を受けやすいため、ミューメタルでシールドすることで信号の品質を維持しています。
2. 磁気シールド室: 医療機器や実験装置など、非常に微弱な磁場を測定する精密機器は、外部の磁場の影響を極力排除する必要があります。そのため、ミューメタル製の磁気シールド室が用いられます。
3. 陰極線管: ブラウン管テレビや古いタイプのオシロスコープなど、電子ビームを利用する機器では、地磁気などの外部磁場の影響を軽減するために、ミューメタルが使用されています。
4. 超電導量子干渉素子(SQUID): SQUIDは、非常に微弱な磁場を検出できるセンサーです。生体磁気計測などの精密測定に用いられますが、外部の磁場の影響を非常に受けやすいため、ミューメタルによる厳重な磁気シールドが不可欠です。

ミューメタルの特性

ミューメタルの特徴は、その高い透磁率にあります。この特性により、外部からの磁場を吸収し、内部への影響を大幅に減少させることができます。ただし、ミューメタルは、強い衝撃や過度な変形によってその磁気特性が劣化する可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。また、温度変化にも敏感なため、使用環境を考慮する必要があります。

まとめ

ミューメタルは、高い透磁率を持つ特殊なニッケル-鉄合金であり、磁気シールド材として精密機器から海底ケーブルまで幅広い分野で利用されています。特に、微弱な磁場を正確に計測する分野においては、その高い遮蔽能力が不可欠です。今後も、さらなる技術革新と応用が期待される重要な材料と言えるでしょう。

関連項目

フェロニッケル
パーマロイ

外部リンク

* ミューメタルチャンバ（高透磁率材料） - VICインターナショナル (PDF)

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