ミラージュ5 (航空機)

ミラージュ5とその発展型のミラージュ50

ミラージュ5（Mirage 5）は、フランスのダッソー社がミラージュIII Eを基に開発した戦闘爆撃機です。この機体は、イスラエルのリクエストに応じて改良されたもので、軍事機器としての特性を備えています。本稿では、ミラージュ5の基本情報や発展型であるミラージュ50について詳しく解説します。

ミラージュ5の概要

ミラージュ5は、初期にローマ数字で表記されていましたが、類似性を避けるためにアラビア数字に改められました。主な改良点としては、シラノII火器管制レーダーが除去され、操縦席の後方にある電子機器が機首に移設されたことにより、燃料タンクの増設が可能となり、航続力が向上しました。また、パイロンも2箇所追加されましたが、ペイロードの変化はありませんでした。

1966年、イスラエルは50機のミラージュ5Jを発注しましたが、フランス政府の輸出禁止措置により、この注文はキャンセルされました。代わりに、これらの機体はフランス空軍向けに改修され、ミラージュ5Fとして運用されました。結果として、ミラージュ5はその高性能と信頼性から、複数の国々に広く販売されることとなりました。

特に、ダッソー社の政策変更に伴い、リビアやエジプトなどイスラエルとは対立する国々にも売却されました。リビアには約110機が輸出され、カダフィ政権はこれらを用いて第四次中東戦争に参加しました。エジプトも、サウジアラビアの資金援助を受けてダッソーから購入し、地元の空軍に無償譲渡しました。

エジプトの使用例

エジプト空軍のミラージュ5は、1986年のイラン・イラク戦争でイラクを支援するために展開し、実際に敵機と交戦しました。当時、エジプトのミラージュ5は、最新鋭のミラージュ2000と誤認されることもありましたが、ALQ-234の電子戦ポッドを搭載しており、多様な対空戦が可能でした。

イスラエルは、正規にはミラージュ5を入手できなかったものの、スイスでの産業スパイ活動によって得た情報をもとに、類似機であるネシェルを生み出しました。その後、アメリカ製エンジンを搭載した改良型クフィルも開発され、アルゼンチンでは「ダガー」として使用されました。

ミラージュ50の発展

ミラージュ50は、エンジンをミラージュF1のアター09K-50に置き換えた機体で、基本的にはミラージュIIIやミラージュ5を改良したものとなっています。1970年には、スイス空軍の要求を受けて試作機が飛行し、ここからミラージュ50が生まれました。ミラージュ50は、前方にカナード翼を装備し、離着陸性能を向上させています。

チリやベネズエラがこの機体を採用し、各国のニーズに応じた改良が行われました。特にチリは、フランス空軍のミラージュ5Fを改修したミラージュ50FCを取得し、さらに近代化改修を施してパンテーラ仕様へと進化させています。ベネズエラも新造機を取得し、エグゾセ対艦ミサイルの運用能力を持つ機体となりました。

現在の運用状況

現在、ミラージュ5とミラージュ50は、フランスを含む多くの国で退役していますが、パキスタンなどの国ではなお第一線で活躍しています。パキスタンは、フランス空軍などから多くの中古機を購入し、アップグレードを行った結果、150機以上を保有しています。これらの機体は、依然として多くの空軍の中で重要な役割を果たしています。

まとめ

ミラージュ5は、その設計と運用によって多くの国で愛され、多様な派生型が生まれることとなりました。それぞれの国の戦略やニーズに応じて適応されているこの機体は、冷戦期における空対空及び対地攻撃の重要な要素として存在し続けています。

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